余命2ヵ月のわたしを愛した死神

それからその日の帰宅時は、何故かドッと疲れが出て、わたしはソファーの上に倒れ込んでしまった。
わたしもすっかり、雨城さんの自宅を自分の自宅のように気を許して過ごせるようになってきていた。

「今日はお疲れ様のようですね。」

わたしの様子を見ながらそう言う雨城さんは、無駄な動き一つ無く上着を脱ぐ。
わたしは苦笑いを浮かべながら「ちょっと色々ありまして。」と答えた。

「それじゃあ、ゆっくり過ごしていてください。夕飯は僕が作ってしまいますから。」

穏やかな表情でそう言う雨城さんは、ワイシャツの袖のボタンを外し、腕捲くりをする。
しかしわたしはソファーから起き上がると、「いえ、わたしも作ります!」と気合いを入れるように力強く宣言し、立ち上がった。

「無理しなくても大丈夫ですよ?」
「無理なんてしてないです。わたし、雨城さんと一緒にキッチンに並んでご飯作るのが楽しいんです。」

そう、あれ以来、わたしは毎日雨城さんとキッチンに並び、料理するのが日課のようなものになっていた。
恋人らしい事がなかなか思い浮かばず、頭を悩ませていたわたしたちなのだが、二人で何とか考えを絞り出し、唯一思い浮かんだのが二人で料理をする事だったのだ。

「今日は何を作りましょうか。」

そう言いながら、わたしはキッチン内の壁に掛けてある元自宅から持って来ていたエプロンを手に取り、身に付ける。
雨城さんはキッチンへ入って来ると、「今日は親子丼とかどうでしょう?」と言いながら冷蔵庫を開け、卵を取り出して見せた。

「親子丼いいですね!」
「それじゃあ、決まりですね。」

そして、二人でキッチンに並び、親子丼と味噌汁を作っていく。
メイン料理はいつも雨城さんが担当してくれ、わたしは汁物や副菜などを作るようにしていた。

そんな雨城さんが鶏肉を捌いている中、わたしはその隣である疑問を問い掛けた。

「死神って、ご飯を食べる習慣って無いですよね?最初は、戸惑いませんでしたか?」

わたしがそう尋ねると、雨城さんは鶏肉を捌く手を止める事なく「そうですね、最初は不思議な感じがしました。」と答えた。

「やっぱりそうですよね。」
「こちらの世界で暮らし出す前から人間の生活は一通り把握はしていたので、食事を摂る事自体は知っていたんですけど、実際に肉体を持って、お腹が空くという感覚を知り、初めてこういう事なのかと知りましたね。」

そう話しながらも、手際良く鶏肉を捌いていく雨城さんは、次に鍋を取り出し、早速作る工程へと移ろうとしていた。
その横では、鰹節から出汁を摂りながら「なるほどぉ。」と納得している自分がいた。
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