余命2ヵ月のわたしを愛した死神
***


わたしが"BLENDA"に入社して、もうすぐ一ヵ月が経とうとしている。
業務の流れを覚えつつわたしは、少しずつ仕事が楽しく感じ始めていた。

そんなある日、チームリーダーの篠原さんから「まずは1社くらい担当持ってみる?」と提案があった。
自分はまだまだだと思っていたわたしは、その提案が嬉しくて、思わず「はい!」と即答しまった。

そこで、わたしは篠原チームが担当する取引先名簿を見せてもらった。
"あいうえお順"に並ぶ社名を上から辿って見ていると、わたしはその中から、心の奥底から拒否反応を示す社名を見つけてしまった。

「オリオンカンパニー······」

わたしがそう呟くと、篠原さんは「あぁ、オリオンカンパニーね。元々は、戸田主任のチームが担当してたんだけど、最近うちのチームで担当する事になったんだ。」と言った。

心がザワザワして、胸がノイズのような複雑な音を立てる。
そんなわたしの様子を見た篠原さんは「オリオンカンパニーが、どうかしたの?」と尋ねてきた。

「···実は、前に働いていた会社なんです。」
「そうなんだ。今まではそこまで業績が良い会社ではなかったんだけど、つい最近新しいプロジェクトを始動してから、ノッてきてるんだよ。」

篠原さんのその言葉から"新しいプロジェクト"というワードが、やけにわたしの神経を逆撫でする。

(もしかして、その新しいプロジェクトって······)

「オリオンで始動し始めたプロジェクトって、もしかして"リサイクルプロジェクト"ですか?」

わたしがそう訊くと、篠原さんはパッと明るい表情を浮かべ「そうそう!」と言った。

(やっぱりか······)

わたしがそう思いながら、複雑な表情を浮かべていると、篠原さんは何かを悟ったのか「もしかして、オリオンカンパニーで何かあったの?」と、俯き加減のわたしの顔を覗き込んだ。

「···実は、そのプロジェクトの発案者は、わたしなんです。」
「えっ!そうなの?!」
「はい。でも、プロジェクトリーダーになるはずが、突然下ろされてしまって······」

わたしはそう言い、苦笑いを浮かべる。
すると篠原さんは、微かに眉間にシワを寄せながら「それって、理不尽な理由で?」と訊いてきた。

その問いにわたしが静かに頷くと、篠原さんは怒りにも似たムッとした表情を浮かべ、「何かおかしいと思ったんだよなぁ。」と言い始めた。

「そのオリオンカンパニーの今のプロジェクトリーダーがさ、船田さんって人なんだけど、発案者だって割には、内容をあまり理解してないというか、詳細まで話す事が出来なくて頼りないんだよ。でも、プロジェクトの内容は素晴らしいから、こっちも歩み寄ってはいるんだけどさ。」

篠原さんは愚痴を零すように早口でそう言うと、「本当は芽吹さんが発案者だったからなのか!」と、一人で納得していた。
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