余命2ヵ月のわたしを愛した死神
それから奥へ進んで行くと、明るめの照明のフロアがあり、小さい水槽がたくさん並ぶ中では、熱帯魚や淡水魚、チンアナゴなどを見る事が出来、そのまた奥へ進むと幻想的な空間にクラゲが揺らめく水槽があった。
そして、その先には屋外へ出られる出口があり、外へ出ると丁度ペンギンが飼育員さんの後に続き歩く"お散歩タイム"が行なわれていた。
「可愛い〜!」
観客の誰もがそう投げ掛ける皇帝ペンギンの列の一番後ろには、サービス精神旺盛で個性的なペンギンがおり、いちいち両サイドの観客の方を見ながら一足遅れて歩く姿が可愛らしかった。
「あのペンギン可愛いですね!」
「そうですね、サービス精神が旺盛ですよね。」
わたしは雨城さんと微笑ましくそう話しながら、ハンドバッグからスマートフォンを取り出し、そのペンギンの写真を撮った。
その後はイルカショーが始まるまでの待ち時間を使い、水族館と隣接しているフードコートで軽食を取り、イルカショーが始まる少し前に場所を移動した。
実は社会人になってからイルカショーを見るのは初めてだった。
幼い頃に父と一緒に行った記憶はあるが、その記憶も遠い昔の為、霞み始めている。
調教師の女性と息を合わせ、豪快なジャンプを見せてくれるイルカたちのショーが始まると、場内に歓声が響いた。
そのジャンプの勢いで散る飛沫が掛かりそうになった時には少し焦ったが、それもまた良い思い出だ。
イルカショーを見終えると、ゾロゾロと場外へ出る観客たちと共にわたしたちも外へと出る。
わたしはもうそれだけで、充実した一日を過ごせた気分になっていた。
「イルカショー凄かったですね。」
「イルカ可愛かったですよね!調教師さんの合図であんな事が出来るなんて、どれだけの時間を費やして頑張ってるんだろうなぁ。」
わたしがそう呟くように言うと、雨城さんは「"可愛かった"だけで終わらないのが、雫さんらしいですね。」と言い静かに笑う。
それを聞き、(それって、雨城さんから見たら、わたしらしいんだぁ。)と自分では気付かない一面を雨城さんに教えて貰えた気がした。
駐車場に戻り車に乗り込むと、雨城さんはシートベルトを締めながら「雫さん、次はどこへ行きたいですか?」と訊いた。
その雨城さんの言葉から、わたしが思い浮かんだのは、一番最初に"行きたい"と思ったある場所だった。
「何処でも、いいんですか?」
「はい、雫さんが行きたいと思うところなら、何処でも。」
雨城さんにそう言われ、わたしは少し躊躇ったが、どうしても行っておきたい場所を口に出す事にした。
「それじゃあ···、父のお墓参りに行ってもいいですか?」