余命2ヵ月のわたしを愛した死神

そのわたしの一言から、雨城さんが運転する車は、父が眠る霊園へと向かい始めた。

最後に父のお墓参りに行ったのは、一年と少し前だ。
久しぶりに父に会いに行く気分でわたしは窓の外を流れる景色を眺めていたが、それはいつもとは少し違う気分だった。

お墓で眠る父に会いに行くのは、きっとこれが最後になるだろう。
次に会うその時は、きっとこの空に広がる雲の上だ。

"アクアパーク水族館"を出発してから、約一時間半。
長かったようであっという間だったドライブは、父が眠る霊園に到着した。

わたしは、ここへ向かう途中に寄ってもらっていた花屋で購入した、白と黄色の花を持ち、父が眠るお墓へと進んで行く。
その後ろには、しっかりと雨城さんがついて来てくれ、わたしは後ろに雨城さんの存在を感じながら霊園の階段を登って行った。

そして到着する"芽吹家之墓"の前。
わたしは花を持ったまま、墓前で少しの間、立ち止まって父の事を思い出していた。

思い浮かぶ父の顔は、目を細めて笑う優しい表情ばかり。
わたしは、トラックを運転する父の助手席に座りながら、"最後の雨"を聴くのが好きだった。

「お父さん、久しぶり。」

そう声を掛け、わたしは一歩前に足を踏み出すと、墓前でしゃがみ込み、花を供えた。
本当は墓石の掃除をしようと思っていたのだが、綺麗で状態が良く、最近祖母が訪れたのだろうと思い、掃除するのをやめた。

ロウソクを立て、マッチで火をつけ、墓石を見上げる。
そこには、居るはずも無い父の姿が視えるような気がして、わたしは薄っすらと笑みを浮かべた。

すると、わたしの隣に雨城さんがやって来て、わたしと同じようにしゃがみ込む。
それから墓石を見上げると、雨城さんは「初めまして、雨城と申します。娘さんとお付き合いさせていただいております。」と父に話し掛けるように言葉を口にした。

わたしは胸の前で手を合わせると、目を閉じた。
そして、父にこう話し掛けた。

(お父さん、わたしももうすぐ、そっちに行くからね。)

心の中で父にそう話し掛けたわたしは、目を開けると再び墓石を見上げる。
すると、そこには視えるはずもない父の姿が視えるような気がして、その父は悲しい表情を浮かべていた。
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