余命2ヵ月のわたしを愛した死神
「なぁに言ってるのよ!"BLENDA"なんて一流企業じゃない!あたしだって、"BLENDA"のボールペン愛用してるわよ?」
賢司さんはそう言うと、着ているシャツの胸ポケットから一本の黒ペンを摘んで持ち上げて見せた。
それを見た"慧仁くん"は、「いつもご愛用頂き、ありがとうございます。」と言って、優しい笑みを浮かべたのだが、その微笑む横顔があまりにも美しく、わたしは思わず目を逸らしてしまった。
「あ、そうそう、雫ちゃんにまだ紹介してなかったわよね!このいい男は、雨城(あまき)慧仁くん!最近よくピアノを弾きに来てもらってるのよ!」
そう言う賢司さんの紹介から、「初めまして、雨城です。」と程良く低いイケメンボイスで自己紹介してくれる雨城さんは、わたしの方へと顔を向け会釈をする。
恥ずかしくて直視出来ない程の整った美しい顔立ちと、内面から放たれる穏やかなオーラに圧倒され、わたしは緊張で強張った表情を何とか引っ張り上げながら、「初めまして、芽吹雫です。」と自分の名を名乗った。
「それでね、さっきも言ったけど、うちの雫ちゃんどうかしら?若いのに、真面目で仕事熱心な子よ?」
「僕は構いませんけど···、どうしますか?」
賢司さんからのお願いに、雨城さんは落ち着いた様子でそう訊き、わたしに判断を委ねる。
正直言うと、今すぐにでも新しい職に就かなければいけない状況だ。
残っていた有給休暇も使わずに辞めてしまい、働かなければ生活をしていけない。
わたしは(そんな一流企業にわたし何かが通用するのだろうか···)という不安を抱きつつも、「本当に、いいんですか?わたしなんかが······」と控えめに問い掛ける。
「雫さんが前向きに考えてくださるなら、まずはうちの会社に見学に来てみませんか?それから働きたいかどうかを決めて頂いて構いませんよ。」
雨城さんの提案に「そうしなさいよ!まずは見学に行ってみたら?」と、賢司さんはわたしの背中を押してくれる。
わたしが賢司さんの言葉に「はい。」と自信無さ気に小さく頷くと、賢司さんは「そうしましょ、そうしましょ!」と嬉しそうに手を合わせ叩いた。
「雫ちゃんの事、よろしくね?」
雨城さんにそう言う賢司さんは、安堵の笑みを見せる。
わたしは雨城さんの方に身体を向けると「よろしくお願いします。」と頭を下げた。
「いえ、こちらこそ。お世話になっている賢司さんからの推薦ですから、こちらとしては歓迎しますよ。」
そう言う雨城さんもわたしの方に身体を向けると、同じように頭を下げ、姿勢が良くとても紳士的な対応をしてくれた。