余命2ヵ月のわたしを愛した死神

「雨城さんは、何ラーメンがお好きですか?」

メニュー表に並ぶラーメンの写真を眺めながら、わたしがそう訊くと、雨城さんは少し考えるような仕草をした後で「そういえば、ラーメンって食べた事が無いかもしれません。」と答えたのだ。

「えっ!35年間で一度もですか?」
「はい、多分初めてです。」

まさかの事実にわたしが驚いていると、雨城さんは何だか嬉しそうにメニュー表を眺めながら「ラーメンの初体験を雫さんと共に出来るなんて、嬉しいですね。」と言っていた。

それから「すいません!」と声を掛け、わたしたちが注文したのは、塩ラーメンと味噌ラーメンだ。
ホール担当の"奥様"は、「塩ラーメンと味噌ラーメンですね!かしこまりました!」と言い、テーブルから離れて行くと、厨房でラーメンを作る"ご主人"に注文を伝えに行った。

注文をし終えた後、雨城さんはメニュー表を元に戻しながら「今日は充実した一日でしたね。」と言った。
その雨城さんの言葉に「はい!」と頷いたわたしは、「とっても楽しかったです!」と言いながら、感情が溢れ出すままに笑みを浮かべた。

「水族館に行けて良かったです。良い思い出になりました。」
「そう言っていただけると、僕も嬉しいです。」
「イルカショーも凄かったですけど、あのペンギンが可愛かったですよね〜!」

わたしがそう言い微笑むと、雨城さんは表情を綻ばせ「そうですね。」と同調した後に「でも、僕には雫さんが一番可愛らしく見えましたよ。」とサラリと言ってのけた。

「え、えぇ?!わたしですか?!」
「はい、あんなにはしゃいでいる雫さんは、初めて見たので。」

そう言い微笑む雨城さんの言葉に今日の自分を思い返し、わたしは恥ずかしくなってくる。
確かにわたしは、自分でも大人げ無くはしゃいでしまった自覚はあったからだ。

「正直言うと、はしゃいでいる雫さんがあまりにも可愛らしかったので、雫さんばかり見ていて、他に見た記憶があまりないんですよね。」

そう言って照れ笑いを浮かべる雨城さんは、手のひらを後頭部に回し「はははっ。」と笑っていた。
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