余命2ヵ月のわたしを愛した死神
褒められ慣れていないわたしは、話題を自分から逸らそうと「そういえば、」と何かを思い出した振りをして「先程も言いましたが、今日は父のお墓参りに付き合ってくださり、ありがとうございました。」と改めて雨城さんにお礼を言った。
「いえ、僕も雫さんとご一緒出来て、良かったです。」
雨城さんはそう言うと、改まるかのように手を膝の上に乗せ、優しい表情を浮かべた。
「本当は掃除もしようかと思っていたんですが、先に祖母が来て綺麗にしてくれていました。」
「お祖母様ですか?」
「はい、多分そうだと思います。わたしには母は居ませんし、確か父に兄弟は居ないので、掃除をするのは祖母くらいかと。」
わたしがそう言うと、雨城さんは微かに切ないような表情を浮かべ「お祖母様には、会いに行かなくていいんですか?」と尋ねた。
しかし、わたしは視線を落とし、出来るだけ穏やかな口調で「いいんです。」とだけ答えた。
祖母とは、もう何年も会っていない。
最後に会ったのがいつなのか、覚えていないくらいだ。
祖母は言葉に棘のある人で、幼い頃から祖母の事は苦手だった。
父が仕事で留守の間は祖母にお世話にはなっていたが、どうしても祖母の事を好きにはなれなかった。
祖母は何かと愚痴が多くなり、母とわたしを比べるような言葉を口にしたり、「あんたの母親はねぇ、」と母の悪口ばかり言っていて、幼いながらに不快に感じていた事をよく覚えている。
祖母からしたら、勝手に家を出て、わたしを置き去りにした母の事が気に食わないのは当然で、仕方の無い事なのは理解しているのだが、そんな祖母の言葉から逃げるようにわたしは祖母が今でも住んでいる実家には寄り付かなくなっていたのだった。
すると、「お待たせしましたぁ!」とホール担当の"奥様"がオボンに乗せたラーメンを両手で持ち、運んで来てくれた。
わたしたちは、それぞれそのラーメンの器を受け取り「ありがとうございます。」と言うと、ホール担当の"奥様"は「それではごゆっくりどうぞ!」と明るく言って、再び片付けへと戻って行った。
「それでは、いただきましょうか。」
「はい。」
そう言って、手を合わせるわたしたちは「戴きます。」と声を揃え、割り箸を手にする。
わたしの注文した味噌ラーメンと雨城さんの塩ラーメンが、魚介の良い香りとコク深い味噌の香りを放っており、空腹のところを更に食欲がそそるのだった。