余命2ヵ月のわたしを愛した死神
それから美味しいラーメンを堪能したわたしたちは、ラーメンで熱が籠った身体が冷める間もなく、お店を出た。
「初めてのラーメンどうでしたか?」
「ラーメン美味しかったです。また行きたいですね。」
そう話しながら歩く7月の蒸し暑い夜道に、突然生温い水滴が頬を掠める。
何かと思い空を見上げると、いきなり雨が降り始め、わたしは雨城さんに手を取られ、手を引かれるままに駆け出した。
急いで自宅マンションまで走ったが、短い距離でもずぶ濡れになってしまう程の雨で、雨城さんとわたしは突然の雨にエントランスから外を眺めた。
「凄い雨ですね。」
「今日、雨予報でしたっけ?」
「いえ、予報外の雨なので、もしかしたら何処かで指令が下りたのかもしれません。」
その雨城さんの言葉に、何だか少し胸が痛む。
そうだった。
雨が降る時は、何処かで誰かの余命が告げられた時だった。
わたしは他人事には思えず、切ない気持ちを抱きながら、雨が降る夜の風景を見つめた。
「雫さん、風邪を引いてしまうと困るので、すぐにお風呂に入りましょう。」
雨城さんのその言葉でハッとしたわたしは、外から目を逸らすと「そうですね。」と答え、わたしは自分の腰に添えた雨城さんの手に導かれるままにエレベーターに乗り、自宅がある7階まで上った。
自宅に着いてからは、雨城さんが素早くバスタオルを取りにバスルームへ向かい、玄関で待つわたしの元へ戻って来ると、フカフカのバスタオルを優しくわたしの頭に被せ、濡れた髪の毛を拭いてくれた。
「すぐにお風呂沸かしますね。」
バスタオル越しのすぐ傍で雨城さんの優しい低音が響く。
わたしは先程の切ない気持ちを引きずったまま、俯き加減で雨城さんの服の袖を摘んだ。
「雨城さん。」
わたしがそう呼ぶと、雨城さんはわたしの髪を拭く手を止め、顔を傾けながらわたしの顔を覗き込んだ。
「どうしました?」
わたしは雨城さんの問い掛けに視線を上げ、雨城さんを見上げると「今日、一緒にお風呂に入りませんか?」と言った。
いつもなら恥ずかしくて言えないような言葉だが、今のわたしは少しでも一人になる時間が恐くて、心の思うままに言葉を口に出せてしまっていた。
雨城さんは少し驚いたようだったが、すぐに優しい笑みを浮かべ「いいですよ、一緒に入りましょう。」と答えてくれた。