余命2ヵ月のわたしを愛した死神

一通りわたしの髪の毛を拭き終えた雨城さんは、その後すぐにお風呂を沸かしてくれた。
そして雨城さんは、わたしがいち早く湯船に浸かれるようにバスルームへと促してくれる。

今日の湯船はいつものライム色とは違う、乳白色のにごり湯だ。
これも二人で初めて入るにあたっての雨城さんの気遣いだろうか。

(勢いのままに一緒に入りたいなんて言っちゃったけど、よく考えてみれば、わたしたちはまだお互いの裸を見た事が無いんだよね。)

わたしは冷えた身体をにごり湯にゆっくりと浸からせていきながら、そんな事を思い、今更ながらに恥ずかしくなってきてしまった。
それからわたしが湯船に肩まで浸かり終えたタイミングで、浴室のドアが開いた。

湯気が立つ中で雨城さんの姿がハッキリ見えるわけではないが、わたしは伏し目がちになりながら浴槽の奥の方へと移動する。
そして浴室に入って来た雨城さんはドアを閉めると、「お湯加減はいかがですか?」と尋ねながら、湯船に足を入れ、わたしが入る浴槽の反対側にゆっくりと肩まで湯船に浸かっていった。

「温かいですよ。身体が冷えていたので、最初は少し熱く感じましたが、丁度良いです。」

わたしはそう答えながら、そっと雨城さんの方へ視線を上げて見る。
雨城さんはわたしと向き合うように湯船に浸かっており、上半身が胸から上の部分しか見えていないにも関わらず、初めての雨城さんの裸に、わたしはかなり緊張してしまった。

「予想外の雨に濡れてしまいましたからね。」

そう言う雨城さんの言葉から、先程の切なさが呼び起こされる。
わたしは湯船の中で三角座りをしながら膝を抱えると、「予想外の雨って事は、何処かにわたしのような人が増えたという事ですよね?」と、恐る恐る訊いた。

雨城さんはわたしの言葉に、1テンポ遅れて「···そういう事に、なりますね。」と言いづらそうに答えた。

「わたし···、恐くなったんです。本当は、今日一日が充実していたので、あとはもう思い残す事は無いかな、なんて···一瞬思ったんですけど。まだ実感は湧いていないのに、いざその日の事を考えると、やっぱり···恐くて。」

わたしがそう言うと、雨城さんは「それは、当然の感情ですよ。」と言い、わたしにそっと手を差し伸べてくれた。

わたしは差し伸べられたその大きく綺麗な手のひらの上に自分の手を乗せる。
すると、雨城さんはわたしの手を優しく握り締め、自分の方へと引き寄せた。

そうして、わたしは雨城さんの脚の間に入り、雨城さんに後ろから包まれるような形となって落ち着いた。

わたしは今、雨城さんに寄り掛かるように湯船に浸かっている。
後ろからわたしを包む広く厚い胸板に血管が浮き上がる男らしい腕。

わたしは全身で雨城さんの存在を感じながら、緊張の中にも胸が高鳴るようなときめきも感じていた。
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