余命2ヵ月のわたしを愛した死神
それからわたしは、資料作成の続きをしながら脳内シュミレーションをしていた。
船田さんにまず会ったら、何と言おうか。
お久しぶりです?それとも、初めまして?
"BLENDA"の新しい担当として、わたしが紹介されたら、船田さんはどんな反応を示すのだろう。
驚くのか、それともまたいつものように馬鹿にしてくるだろうか···――――
頭に浮かぶのは、やはりマイナスな事ばかり。
しかし、わたしは決めたのだ。
わたしを馬鹿にし、努力を踏み躙った船田さんにギャフンと言わせてやる事を···――――
そしてその日の就業時間後、わたしはギリギリまで仕事をしていた為、帰る支度に時間が掛かっていた。
すると、退社間際に篠原さんがやって来て「じゃあ、また明日!頑張ろうね!お疲れ!」とわたしに言い残し、帰宅して行った。
その様子を見て居たのか、篠原さんが帰宅して行ってすぐのタイミングで「お疲れ様です。」と現れた雨城さんは、「明日、何かあるんですか?」とわたしに尋ねてきた。
「あ、雨城さん。お疲れ様です。実は明日、担当する事になった取引先との打ち合わせがあって······」
わたしがそう言い苦笑いを浮かべると、雨城さんは「そうでしたか。それは緊張しますね。」と言った。
「はい···、でも、ただ緊張するだけではなくて、ちょっと事情がありまして······」
「事情?」
「実は、担当する事になった取引先は、わたしが以前働いていた会社なんです。」
わたしがそう言うと、雨城さんはハッと驚いたような表情を浮かべ、「それって、前に話していた、あの会社ですか?」と言った。
雨城さんの言葉にわたしはこくりと頷くと「なので、何だか変に緊張してしまって······」と、表情を強張らせた。
「その事は、篠原さんはご存知なんですか?」
「はい、知っています。その上で、篠原さんが相手にギャフンと言わせてやりましょう!と言って、背中を押してくださったんです。」
少し不安気だった雨城さんの表情は、わたしの言葉により解消され、「そうだったんですね。それは確かに、相手に思い知らせるには良い機会かもしれませんね。」と言って、悪戯な笑みを浮かべた。
「肩の力を抜いて、篠原さんに任せながら、雫さんの力を見せれば大丈夫ですよ。雫さんなら、大丈夫です。」
雨城さんにもそう言っていただき、自分に少しだけ自信が持てたような気がした。
そして、雨城さんは「じゃあ、今日は明日に備えて、精の付くものを食べましょう。」と言い、帰り支度を終えたわたしと共に歩き出した。
「精の付くものって···何でしょう?」
「んー、鰻とかですかね?」
「あぁ!あとは、レバーとか?」
そんな会話をしながらわたしたちは退社し、帰宅途中にスーパーに寄り、鰻の蒲焼を購入してから帰宅したのだった。