余命2ヵ月のわたしを愛した死神


そして、いよいよ決戦の日。
通常であれば、ただの打ち合わせと称した顔合わせなのだが、わたしからすれば決戦も同然なのだ。

"オリオンカンパニー"の担当者が来社するのは、14時を予定している。
わたしはその時間までに、何度時刻を確認したか分からない。

それから壁掛け時計が14時を指す約10分前。
販促課に内線電話の音が鳴り響き、それを篠原さんが取った。

「はい。販促課、篠原です。」

篠原さんはそう言うと、電話の向こうの誰かと会話を交わし「分かりました。」と言ってから受話器を置いた。

そして、デスクに座るわたしにアイコンタクトで"オリオンカンパニー"の来社を知らせる。
どうやら、今の電話は一階の受付からだったようだ。

いよいよ、その時がきたのだ。

わたしは、"オリオンカンパニー"の担当者が用意したとされている資料を篠原さんから受け取り、軽く目を通していた。
その資料は、紛れも無くわたしが在籍していた頃に自分自身で作成した資料だった。

それを見て複雑な気持ちになったと同時に怒りも湧き上がってくる。

(少しも自分で修正したりせず、そのまま使ってるんだなぁ。)

そう思うと、どうしても船田さんをギャフンと言わせてやりたい気持ちが強くなる。

すると、篠原さんの「芽吹さん、来たよ。」と囁く声が聞こえ、わたしはふと顔を上げた。
わたしがエレベーターがある方へ顔を向けると、そこには軽快な足取りで胸を張りながらこちらへ歩いて来る船田さんの姿と、その後ろにわたしが知らない若い男性社員の姿が見えた。

(あの人が真田さん?新入社員かな?)

わたしはそう思いながら、篠原さんから呼ばれるまでデスクで待機していた。

そこへ、船田さんが「オリオンカンパニーの船田と申します。」と近くに居た販促課の社員に声を掛けていた。

今日の船田さんは、胸元に大きなリボンがついた白いブラウスにグレーのスーツパンツ姿で、50代の女性にしては若い社員のような装いだった。
しかし、化粧は昭和を感じさせる水色のアイシャドウに、頬には桜色のチークが少し離れた距離でも分かる程に頬骨を強調させていた。

すると、船田さんに声を掛けられた販促課の社員が「篠原さん、オリオンカンパニーの船田さんがいらっしゃいましたよ。」と篠原さんに声を掛ける。

篠原さんは「はい。」と返事をしてデスクから立ち上がると、一瞬わたしの方を見て微笑んでから、船田さんの方へと歩み寄って行った。
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