余命2ヵ月のわたしを愛した死神
「どうも、船田さん。お忙しい中、お越し頂きありがとうございます。」
篠原さんが丁寧に出迎えると、船田さんは「いえいえ、とんでもない!本日はお時間を頂き、ありがとうございます。」と言い、にこやかに一礼をしていた。
「実は、今日は打ち合わせを兼ねて、新しい担当者をご紹介したいと思っておりまして。」
篠原さんがそう言うと、船田さんは少し驚いた様子で「あっ、そうなんですか?担当者様が変わるんですね。」と言っていた。
「はい、突然で申し訳ありません。」
そして篠原さんは、くるりとこちらを振り向くと、小さく手を上げ「芽吹さん!」とわたしを呼んだ。
その瞬間、船田さんが「えっ、芽吹さん?」と表現を曇らせたのをわたしは見逃さなかった。
「はい。」
わたしは返事をすると、デスクから立ち上がり、資料を手に持ちながら篠原さんの元へと歩み寄って行く。
そのわたしの姿に気付いた船田さんは、その"芽吹"がわたしだと分かると「はっ···!」と赤羅様に動揺を見せた。
わたしが篠原さんの隣まで辿り着くと、篠原さんは船田さんの方へ向き直り、わたしに手を差しながら「新しい担当者の芽吹です。」と紹介してくれた。
「初めまして。今後、オリオンカンパニー様を担当させていただきます、芽吹と申します。宜しくお願い致します。」
わたしは初対面の振りをしながら、そう挨拶をし、船田さんと真田さんに向けて一礼をした。
そんなわたしに「初めまして、オリオンカンパニーの真田と申します。宜しくお願い致します。」と先に明るく挨拶してくれたのは、若い男性社員の真田さんの方だった。
それから真田さんに続き、「船田です。宜しくお願い致します···」と、挨拶してくれた船田さんは、表情を引き攣らせていた。
「それでは、会議室に移動しましょうか。ご案内致します。」
そう言い歩き出す篠原さんに続き、わたしも歩き出すと、その後ろを船田さんと真田さんがついて歩いて来る。
篠原さんが案内した会議室は、販促課のすぐ横にあるモザイクガラスで囲われた10畳程のスペースの小規模の会議室だった。
そこに入ったわたしたちは、会議室内にある長方形のテーブルに向かい合うように席についた。
「それでは、改めまして。本日は、どうぞ宜しくお願い致します。」
篠原さんの言葉をきっかけにわたしたちは一礼をし、打ち合わせが始まる。
さぁ、ここからが本番だ。