余命2ヵ月のわたしを愛した死神

そして、その日の帰宅後。
事前に雨城さんには、"オリオンカンパニー"との打ち合わせを話していた為、雨城さんに「打ち合わせは、どうでした?」と訊かれた。

わたしはキッチンに立ち、エプロンを身に付けながら「篠原さんのお陰で気持ちがスッキリ出来ました!」と答えた。

そのわたしの表情を見て、雨城さんは微笑むと「だいぶスッキリ出来たみたいですね。篠原さん、きっと良い仕事したんでしょうね。」と言って、ワイシャツの袖のボタンを外しながらキッチンへ入って来た。

「はい、篠原さんには本当に感謝です。」

わたしがそう言うと、雨城さんは腕捲くりをし、それから「その役割、出来る事なら僕が担いたかったですね。」と言いながら、シンクで手を洗い始めた。

「でも、雨城さんって毒吐けますか?」
「んー、どうでしょう。そういう意味では、篠原さんが適任だったかもしれませんね。」
「篠原さん、めちゃくちゃ恐かったですよ。笑顔で毒吐いてましたからね。」

わたしがそう言いながら毒を吐く手振りをすると、雨城さんは「ははっ。」と笑い、それから手を洗い終えると、わたしの方へ歩み寄って来た。
と思えば、その勢いのままわたしを抱き寄せ、わたしの頭に頬を寄せた。

「篠原さんの話はここまでです。それ以上言われてしまうと、妬いてしまいます。」

思わぬ雨城さんの言動に驚くわたしは、思っていた以上に雨城さんがヤキモチ妬きである事実に何だか嬉しくなってしまう。

嫉妬心を擽るつもりは毛頭無かったのだが、結果的にそうなってしまった事にわたしは少し反省した。

「分かりました。もうこれ以上は言いません。」

わたしはそう言うと、雨城さんの背中に腕を回した。

「それから、雫さん。」

耳元で雨城さんの柔らかな低音が響き、わたしは「何ですか?」と返事をする。
すると、雨城さんはわたしを抱き締めたまま、こう話し始めた。

「次の土曜日なんですが、任務の件数が多い上に、夜まで掛かってしまいそうなので、一日家を空けてしまう事になると思います。申し訳ありません。」

――――任務の件数が多い···

それはつまり、肉体を失う魂が多い事を意味している。

わたしは、何だか切ない気持ちを抱きながら「分かりました。」とだけ返事をし、雨城さんの背中に回す腕に力を込めた。

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