余命2ヵ月のわたしを愛した死神
***


「そういう理由(わけ)で、今日は珍しく来たのねぇ?」

カウンター内でニコニコしながらわたしを見つめる賢司さんは、いつになくウキウキしている様子だった。

今日は、雨城さんが「一日家を空ける」と言っていた土曜日。

わたしは、日中は家で家事を済ませながらウダウダ過ごし、夕飯を一人で済ませるのも寂しく感じた為、久しぶりに"SEVENS BAL"に訪れたのだ。

「もう、慧仁くんったら、最近めっきり来なくなっちゃって。久しく、慧仁くんのピアノ聴いてないわぁ〜。」

そう言いながら、賢司さんはわたしが大好きなコーンスープを出してくれる。
わたしは「ありがとうございます。」とコーンスープを受け取った後で、「雨城さんに賢司さんが寂しがってたって、言っておきましょうか?」と言った。

「ううん!いいのよぉ〜!それだけ、雫ちゃんの事を大切にしてて、雫ちゃんとの時間を大事にしてるって事なんだから!花火の日だって···、ねえ?」

そう言って、賢司さんは目を細めながら「うふふっ!」と微笑む。

どうやら、あの時の"事後"の誤解は解けていないようだ。
この際なので、ハッキリ誤解を解いておこうかとも思ったが、結局は賢司さんのペースに呑まれて解けず終いになりそうだったので、わたしはそのまま何も言わずにいる事にした。

「まぁ、でも、本当に良かったわ。慧仁くんが人間らしくなってきて。」

賢司さんのその言葉に、わたしはスプーンを持つ手を止め、賢司さんを見上げる。

賢司さんが言う"良かった"とは、どういう意味なのだろうか。

「賢司さんって、そのぉ···、雨城さんが人間ではないって、いつ頃から気付いてたんですか?」

わたしは賢司さんにそう訊くと、湯気が立ち甘いコーンの香りを漂わせるコーンスープにスプーンを入れ、そっと掬い上げた。

「んー、そうねぇ。慧仁くんが初めてうちの店に来たのがぁ、確か···一年前くらいだったかしら。物凄ーく雨が降ってる日でね、多分雨宿りのつもりでうちの店に入って来たんだろうけど、あそこまでの男前が入って来る事なんて滅多にある事じゃないから、よく覚えてるわぁ。」

賢司さんはそう言いながら、その時の事を思い出すかのように宙を仰ぎ、まるで恋する乙女のように瞳を輝かせていた。

「でもね、何ていうか···、最初見た時から、あ、この人は普通の人じゃないなぁ〜って感じたの。」
「それは、どういう意味でですか?」

わたしは賢司さんにそう訊くと、スプーンで掬い上げたコーンスープに息を吹き掛けてたから、そっと口へ運んだ。
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