余命2ヵ月のわたしを愛した死神
すると、突然雨城さんは「はあぁー······」と溜め息をつきながら、わたしから顔を背けた。
その雨城さんの反応に(あっ、ヤバい···やらかしたかも。)と、雨城さんに呆れられてしまったのではないかと焦ったわたしは、「あっ!ご、ごめんなさい!すぐに脱ぎます!」と言うと、着替えに寝室を出ようとした。
その時、急いでベッドから下りたわたしの腕を、雨城さんはグッと掴み、引き止めた。
「えっ···?」
わたしはそれに驚き、振り返って雨城さんを見た。
わたしの腕を掴む雨城さんは、わたしから目を逸らしたまま微かに頬を赤らめ「着替えなくていいです···、着替えないでください。」と囁くような小さな声で言った。
「えっ、でも···、わたしが勝手に雨城さんのTシャツを着てしまったから···嫌でした、よね?」
わたしが恐る恐るそう訊くと、雨城さんはゆっくりとわたしの方に視線を向け、「···嫌なわけないじゃないですか。」と言って切なく微笑んだ。
「すいません、誤解させてしまいましたね···。雫さんが、あまりにも可愛らしかったので···、どう反応したら良いのか分からなくなってしまって、つい目を逸らしてしまいました······」
そう言う雨城さんは、恥じらうような表情を浮かべ、視点が定まらない様子で目を泳がせていた。
「えっ、じゃあ、呆れたとかでは···?」
「いえ!全然!僕が前に、また着てほしいとお願いしていたのを覚えていてくれたのかなと、嬉しくなってしまって···、それで······」
雨城さんの言葉に「良かった······」と安堵を漏らしたわたしは、気が抜けた身体をベッドへと預ける。
そして、わたしは雨城さんを見上げると「雨城さんにお願いされていたから着た、というのは、一つの理由ではあります。」と言った。
「一つ?まだ他に理由があるんですか?」
わたしの腕から手を離す雨城さんは、今度はわたしの手に自分の手を重ね、そう言った。
「···笑われてしまうかもしれませんが、雨城さんの事が恋しくなってしまって···、それで、思わず雨城さんのTシャツを着てしまいました。」
恥じらいの上で雨城さんに本音を話すと、雨城さんはわたしの言葉に優しく微笑み、「本当に雫さんは···僕の心をくすぐるのが上手ですね。」と呟いた。
そして、雨城さんはわたしと並ぶように隣に寝そべり、わたしの頬に手を添えて顔を寄せた。
「もう充分我慢したので、いいですよね?」
雨城さんはそう言い終えるかどうかのタイミングで、わたしに唇を重ねた。
それは優しくも、感情をくすぶるような深いキスだった。