余命2ヵ月のわたしを愛した死神
その後、わたしはいつものように雨城さんが運転する車で出社し、販促課で自分の仕事をしていた。
すると、「芽吹さんっ!」とわたしを呼ぶ声が掛かり、わたしはパソコンに向けていた視線をふと声がした方に向ける。
わたしの視線の先には、今日も明るい表情を浮かべる篠原さんの姿があった。
篠原さんはわたしの方へ軽快に歩み寄って来ると、「芽吹さんに良い報告があります!」と言って、わたしの目の前で足を止めた。
「良い報告ですか?」
何の事が分からないわたしは、そう言いながら首を傾げる。
そんなわたしに篠原さんは、ある一枚の紙を差し出してきた。
「これ、見て。」
わたしは篠原さんに差し出された紙を受け取ると、そこに書かれている文字に視線を落とした。
篠原さんがわたしに差し出した紙は、どうやら篠原さん宛に届いたメールを印刷したもののようで、送り主の欄には"オリオンカンパニー"と記載されていた。
そして、そこから下の方へ文字を辿っていくと、そこには『担当者変更のお知らせ』と書かれていたのだ。
「えっ···!」
わたしは驚き、篠原さんを見上げた。
篠原さんは、わたしを満足そうな表情で見下ろしており、わたしに向けてピースをしながらニカッと笑った。
「船田さん、担当下りたみたい!新しい担当者は、日下(くさか)さんっていう主任職の人らしいね。」
「あ、そうなんですね。日下主任が新しい担当者···。」
「知ってる人?」
「はい、あまり関わった事はありませんけど、顔見知りではあります。眼鏡を掛けた真面目な男性ですよ。」
わたしがそう言うと、篠原さんは「そうなんだ。じゃあ、船田さんよりはしっかり仕事してくれそうだね!」と嫌味たっぷりに言っていた。
船田さんが担当を下りた事には、気持ちがスカッとした。
しかし、わたしが関われるのは明日まで···――――
自分が考え、初めて選ばれたプロジェクト企画だった。
(もっと···仕事したかったなぁ······)
そう思っていると、篠原さんがわたしの顔を覗き込むように首を傾け、「芽吹さん?嬉しく、ないの?」と不思議そうに尋ねてきた。
わたしはハッとすると、出来るだけ明るい表情を浮かべ「嬉しいですよ!ご報告、ありがとうございます。」と篠原さんに一礼した。
「そっか、なら良かった!」
篠原さんはそう言い微笑むと、「じゃあ、次の打ち合わせの日が決まったら教えるね!その打ち合わせで顔合わせが終わったら、正式に担当を芽吹さんに代わってもらうよ!」と言った。
――――次の打ち合わせ···
その時に、わたしはもう···――――