余命2ヵ月のわたしを愛した死神

雨城さんが唇を離すと、二人の吐息が漏れて交わる。
すると、雨城さんはわたしを突然スッと軽々と抱きかかえ、歩き始めた。

アップライトピアノが置いてある部屋を出て雨城さんが向かった先は、まだ電気も点けていない薄暗い寝室だった。

そこでダブルベッドの中央にわたしをゆっくりと降ろす雨城さんは、わたしの頭を支え、わたしの全身がベッドに着地するまで丁寧に扱ってくれた。

「キスの続きを、してもいいですか?」

雨城さんの甘い囁きがわたしの上から降りてきて、わたしは頷きながら雨城さんに向かって手を伸ばした。
それを合図にするかのように、わたしたちは抱き合い、深いキスを繰り返しながら、お互いを求め合った。

こんな風に愛し合えるのも、この瞬間が最後となる。
それを思うと、わたしたちはもう止まることが出来なくなっていた。

先程までピアノを奏でていた雨城さんの長く綺麗な指がわたしの身体をなぞり、わたしはそれを敏感に感じ取りながら、身体をうねらせる。
二人の熱い吐息が交わり、薄暗い部屋の中でも分かる程、わたしを見つめる雨城さんの瞳は妖艶で美しかった。

わたしは何度も全身で雨城さんを感じながら目を閉じた。
この目に雨城さんの姿をしっかり焼き付けておきたいのに、わたしは身体が感じ取る快楽に思わず瞼を閉じてしまうのだ。

身体の中を走る衝撃がわたしの身体を自然と浮かせ、その度に雨城さんの汗がわたしの頬に落ちてくる。

そしてわたしたちは日付が変わり、もうすぐ朝日が顔を出し始めてる時間までお互いを求め合い続け、二人重なり合いながら崩れ落ちた時、最後に短いキスをして、強く抱き締め合いながら眠りに落ちた。


わたしたちが朝を迎え、目を覚ましたのは、何と出社の為に自宅を出る30分前だった。
深夜の疲れから寝過ぎてしまった事に二人で笑い合いながら、わたしたちは急いで支度を始める。

いよいよ、今日がわたしの最期の日だというのに、わたしはその実感が全く湧かないどころか、何故か昨日までの切なさも無くなってしまっている程だった。

しかし、わたしはある一つの違和感に気付いていた。

(あれっ···何か頭が痛い、というか気持ち悪いというか······)

そうは思ったものの、やっと眠りに就いた時間の事もあり、寝不足のせいかもしれない、という思いもあった。
そんな中、わたしは気を紛らわせながら支度を済ませていき、何とかいつもの時間に雨城さんと共に自宅を出る事が出来た。
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