余命2ヵ月のわたしを愛した死神

会社に到着すると、わたしは一階で雨城さんと別れ、化粧直しの為に化粧室へと向かった。
そこで、少し落ちてしまったマスカラを落としていく。

すると、突然ガンッと頭を強打されたような激痛が走った。

その痛みからわたしは頭を抱え、「うっ···!」と苦痛を漏らす。
それと同時に吐き気にも襲われ、嘔吐まではしなかったが、胸のあたりのムカつきが治まらなかった。

(もしかして、これが前兆?)

わたしはそう思いながら、慌ててハンドバッグの中からポーチを取り出し、いつも持ち歩いているはずの痛み止めを探した。
すると、ポーチの中に1錠だけ痛み止めが残っているのを見つけた。

(あった。とりあえず、これでしのごう。)

わたしはそう思い、痛み止めを握り締めながら化粧室を出ると、販促課のオフィスに行く前に小休憩所へ向かい、水で痛み止めを服用してから、販促課へと向かった。

「おはようございます。」

そう挨拶をしながらオフィスに入ると、わたしを見つけた篠原さんが、いち早く心配そうな表情で歩み寄って来た。

「芽吹さん、おはよう。大丈夫?何か顔色悪いけど。」

篠原さんは本当にすぐ異変に気付く人だ。
わたしは「少し頭痛がして···、でも今、薬を飲んできたので、そのうち治まってくると思います。」と無理に笑顔を作って見せた。

それでも心配そうな表情を崩す事なく、わたしを見つめる篠原さんは「あまり無理しないでね?ヤバそうだったら、すぐに言って?」と言ってくれた。

「はい、ありがとうございます。」

わたしはそう言うと、"大した事ない"という雰囲気を出しつつ、自分のデスクについた。
しかし、実際は全く"大した事ない"事はなく、かなり痛みが激しかった。

(でも、今日が最期の日···、最後まで仕事を頑張りたい。)

わたしはその想いから、何とか気合いで乗り切る事にした。

それから一時間程経つと、やっと少し痛みがマシになってきたが、全く痛みが無くなる事はなかった。
その痛みから、なかなか仕事に集中出来なかったが、わたしは痛みに意識がいかないように努めた。

そしてお昼休憩の時間になったが、わたしは体調の悪さから社員食堂へ行く気力すら無くなってしまっていた。

(まだお昼なのに···、こんなんで乗り切れるかなぁ······)

そんな不安を抱きながら、わたしは自分のデスクで顔を伏せていた。
すると、すぐ傍で「芽吹さん。」とわたしを呼ぶ声が聞こえ、ふと顔を上げると、そこには相変わらず心配そうな表情を浮かべる篠原さんの姿があった。

「大丈夫?お昼食べるのも無理そう?」
「そうですね···、ちょっと食欲が無くて······」

わたしがそう言うと、篠原さんはわたしのデスクに紙パックの野菜ジュースを置き「これくらいは飲めるかな?」と言った。
どうやらわたしの様子を見て、わざわざ自動販売機で購入して持って来てくれたようだ。
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