余命2ヵ月のわたしを愛した死神

「わざわざ買って来てくれたんですか?」

わたしが野菜ジュースを見ながら驚くと、篠原さんは「だって、芽吹さんが心配だったから。」とストレートに気持ちを伝えてくれた。

わたしは「ありがとうございます。有難く頂きます。」と言いながら、デスクに置かれた野菜ジュースを手に取った。

「ううん、俺にはこれくらいしか出来ないから···。じゃあ、俺は休憩取って来るね。芽吹さんは、身体休めてて?」
「はい、ありがとうございます。休憩行ってらっしゃい。」

わたしはそう言い、出来るだけ笑顔を作りながら、休憩へ向かう篠原さんを見送った。

それからわたしは、篠原さんから頂いた野菜ジュースを飲み、デスクで顔を伏せながらお昼休憩を過ごした。

すると、休憩時間が終わるタイミングで「雫さん!」とわたしを呼ぶ声が聞こえ、わたしはその安心する声に顔を上げた。

「雫さん、大丈夫ですか?」

そう言い、こちらに急いで駆けて来たのは、雨城さんだった。

「あ、雨城さん。」
「今、食堂で篠原さんに、雫さんが体調悪そうだと聞いて···」

わたしのすぐ傍でわたしの顔を覗き込む雨城さんは、とても心配そうな表情を浮かべていた。

「かなり体調が悪そうですね。早退した方がいいですよ。」
「でも······」

わたしが早退を拒むような姿勢を見せると、そこへ「仕事の事なら、心配しないで。」と言う声が聞こえてきた。
わたしは振り向く前から、その声が篠原さんだという事が分かっていた。

「こっちでやっておくから、今日は帰って休んだ方がいいよ。」

そう言う篠原さんに、「僕もそう思います。一人で帰るのは無理でしょうから、僕が車で送りますよ。」と言う雨城さんに説得される形で、わたしは急遽早退させてもらう事になった。

まともに最後の仕事をする事も出来ないまま、早退となってしまい、悔いは残るが、確かに仕事に集中出来るような状態ではなかった。
わたしは雨城さんに支えられながら退社すると、車に乗り込み、シートベルトをしながらシートにグッタリともたれ掛かった。

運転席には雨城さんが乗り、車が動き出す。
その時から、わたしの意識は朦朧とし始めていた。

何か雨城さんに話し掛けられている気はするが、何と言っているのかハッキリ聞き取れず、それに反応する事すら出来ない。

(あぁ···、わたしの最期って、こんな感じなんだ······。最後に、雨城さんに別れの言葉を告げる時間すら無かった······)

わたしはぼんやりする中でそんな事を思い、そしていつの間にか目の前が真っ暗になり、わたしは完全に意識を失った···――――――


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