白い女
「ダメって言ってるわよね! 悠聖いいかげんにしなさい」

「やだやだっ!行きたいもん」

「もう里奈さん、こんなささいな事で怒ったら悠聖君が可哀想よ。本当に、(うち)に来ることは気になさらないで。悠聖君の好きだって言ってたチーズケーキももう買っちゃったし」

彼女がウインクすると悠聖が嬉しそうに頷く。

「さ、悠聖くん、いきましょ」

「わーい、行ってきます〜」

「ちょっと……待っ」

「じゃあまた十七時に」

美穂子は私の言葉を遮ると切長の目を緩やかに細め、玄関扉をパタリと閉めた。

「なん、なんのよ……あの人……」

あんな風に悠聖が言うことを聞かないのは初めてだ。

「いつの間に……悠聖と……」

美穂子と話すのは二回目だが、やっぱり何とも言えない苛立ちと不気味さが入り乱れる。

無理矢理、悠聖を閉じ込めることもできたが今度は隠れて美穂子と会うかもしれないと思うとできなかった。

私は夫の悠作にラインを入れると返事を待ちつつ、夕飯の準備に取り掛かった。
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