もう一度、好きになってもいいですか?
世界でいちばん好きだから。
父さんの言葉が、胸の奥に鉛みたいに沈んでいた。
——「遊びじゃないんだぞ。お前の道はもう決まってる」
バスケをしてるときの高揚感も、今はどこか遠くに感じる。
勉強机に突っ伏して、深いため息をついた。
(……俺、本当にこのままでいいのか)
そんなとき、スマホが震えた。
______
saki._.days
今日はありがとう
すごい楽しかったよ!
誘ってくれてありがとう
 ̄ ̄ ̄
画面を見た瞬間、肩の力が抜けたような気がして、ドアに寄りかかりながらしゃがみ込んだ。
_______
aoiblue._.07
俺も楽しかった
ありがとう
 ̄ ̄ ̄ ̄
画面が歪んで、この2行だけの文字を打つのに、時間がかかってしまった。
________
saki._.days
…なんか変だね
何かあった?
 ̄ ̄ ̄ ̄
心臓が強く打った。
(やっぱり……美咲には、隠し事なんて無理だ)
指が震えながら、ゆっくりと返信を打った。
_______
aoiblue._.07
……平気だよ。
大したことじゃない
 ̄ ̄ ̄ ̄
けれど、数秒で既読がついて——すぐに返ってきた。
________
saki._.days
嘘だぁ!
いつもの碧ならびっくりマークとか使うでしょ?
しかも大したことないって!悩み事あるんじゃん!
話したくなったら、いつでも聞くからね〜!
 ̄ ̄ ̄ ̄
その優しい文字を見たら、堪えていたものが一気に崩れそうになった。
本当は隠しておくつもりだったのに。
(……もう、無理だ )
俺は深く息を吸って、打ち込んだ。
________
aoiblue._.07
会えない?
少しだけでいい
 ̄ ̄ ̄ ̄
________
saki._.days
もちろん!
あの公園で待ってるね
 ̄ ̄ ̄ ̄
***
夜の公園。
ベンチに座って待っていると、カーディガンを着た美咲が小走りでやってきた。
心配そうに覗き込む顔が、街灯に照らされて揺れる。
「……碧、ほんとに大丈夫?」
その一言で、堪えていたものが決壊した。
言葉を探すみたいに、俺は唇を噛んで言った。
「……俺さ、バスケ、本気でやりたいんだ」
美咲が瞬きをして、静かに頷いた。
「こんなこと言ったって困るよね」
苦笑しながら言うと、美咲はふるふると首を振る。
「ありがと。だけど、俺、“いずれは会社を継ぐんだ”って決まっててさ。
勝手に進路を決められて……どれだけ頑張っても、最後は“無駄だ”って言われる気がして」
喉の奥が苦しかった。
でも、美咲が隣で黙って聞いてくれてるだけで、少しずつ言葉が出てくる。
「今日の試合で勝っても……仲間と喜んでても、心から笑えなかった。
本気でやっちゃいけない気がして。
でも、本当は……諦めたくない」
拳を握ると、美咲がそっと手を重ねてきた。
その温もりに、目の奥が熱くなる。
「……碧」
「……美咲」
俺を真っ直ぐに見てくれるその瞳に、救われる気がした。
きっと俺は——この人にだから、打ち明けられたんだ。
「諦めたくない、ずっと続けていたい。
……俺も!…本気でやりたい…!!」
思わず口にしたその言葉は、弱音なのか願いなのか、自分でもわからなかった。
ただ、吐き出した瞬間、胸の奥が空っぽになったみたいで、息が震えた。
ふっと温もりが強く重なった。
見れば、美咲が両手でさっきよりも強く、俺の拳を包み込んでいる。
指先まで柔らかくて、優しくて——それだけで涙が出そうになった。
「……碧」
小さな声で呼ばれるだけで、胸が締めつけられる。
美咲は少し俯きながらも、真っ直ぐ言葉を紡いだ。
「ずっと一人で抱えてたんだね。
……苦しかったでしょ。よく耐えたねー!
えらい、偉すぎるよ、碧〜」
その声は驚くほど優しくて、まるで全部を肯定してくれるみたいだった。
俺は堪えきれず、涙が溢れる。
「俺……父さんの言葉が頭から離れなくて…!
“遊びじゃない”って、“継ぐしかない”って…
でも俺は、バスケが好きで、もっと本気でやりたいんだ」
情けないくらい震える声で吐き出すと、美咲は首を横に振った。
「情けなくなんかないよ。
夢を持って、真剣に悩めるのは、すごいと思うよ!
もう、夢を持つだけでえらい!」
そう言って、彼女は手を少し強く握ってきた。
「私ね……碧がコートに立ってる姿、忘れられないんだ。
真剣な顔でボール追いかけて、誰よりも輝いてたし。
あのとき、私の胸まで熱くなったの。
だから……そんな碧の夢が、誰かに“勝手に決められた道”で潰されるなんて、嫌だ」
「……美咲」
声が掠れる。
どうしてこんなにも、俺の弱さを受け止めてくれるんだろう。
彼女は少し恥ずかしそうに微笑んで、続けた。
「きっとね、簡単な道じゃないと思う。
でも……碧ならできるって、私は信じてる。
だから、もし立ち止まりそうになったら、そのときは私が隣にいるよ」
心臓が大きく鳴った。
その言葉は、慰め以上に強くて甘い。
俺の中で、誰にも見せられなかった弱さと夢が、やっと肯定された気がした。
「美咲が、いてくれるなら、なんだってできるかもね」
無意識にそう呟いていた。
美咲は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに頬を赤くして、笑った。
——その笑顔を見て、胸の奥に差し込んでいた重苦しい影が、少しだけ晴れていった。
——そんな美咲が、俺は世界でいちばん好きなんだ。
——「遊びじゃないんだぞ。お前の道はもう決まってる」
バスケをしてるときの高揚感も、今はどこか遠くに感じる。
勉強机に突っ伏して、深いため息をついた。
(……俺、本当にこのままでいいのか)
そんなとき、スマホが震えた。
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saki._.days
今日はありがとう
すごい楽しかったよ!
誘ってくれてありがとう
 ̄ ̄ ̄
画面を見た瞬間、肩の力が抜けたような気がして、ドアに寄りかかりながらしゃがみ込んだ。
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aoiblue._.07
俺も楽しかった
ありがとう
 ̄ ̄ ̄ ̄
画面が歪んで、この2行だけの文字を打つのに、時間がかかってしまった。
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saki._.days
…なんか変だね
何かあった?
 ̄ ̄ ̄ ̄
心臓が強く打った。
(やっぱり……美咲には、隠し事なんて無理だ)
指が震えながら、ゆっくりと返信を打った。
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aoiblue._.07
……平気だよ。
大したことじゃない
 ̄ ̄ ̄ ̄
けれど、数秒で既読がついて——すぐに返ってきた。
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saki._.days
嘘だぁ!
いつもの碧ならびっくりマークとか使うでしょ?
しかも大したことないって!悩み事あるんじゃん!
話したくなったら、いつでも聞くからね〜!
 ̄ ̄ ̄ ̄
その優しい文字を見たら、堪えていたものが一気に崩れそうになった。
本当は隠しておくつもりだったのに。
(……もう、無理だ )
俺は深く息を吸って、打ち込んだ。
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aoiblue._.07
会えない?
少しだけでいい
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saki._.days
もちろん!
あの公園で待ってるね
 ̄ ̄ ̄ ̄
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夜の公園。
ベンチに座って待っていると、カーディガンを着た美咲が小走りでやってきた。
心配そうに覗き込む顔が、街灯に照らされて揺れる。
「……碧、ほんとに大丈夫?」
その一言で、堪えていたものが決壊した。
言葉を探すみたいに、俺は唇を噛んで言った。
「……俺さ、バスケ、本気でやりたいんだ」
美咲が瞬きをして、静かに頷いた。
「こんなこと言ったって困るよね」
苦笑しながら言うと、美咲はふるふると首を振る。
「ありがと。だけど、俺、“いずれは会社を継ぐんだ”って決まっててさ。
勝手に進路を決められて……どれだけ頑張っても、最後は“無駄だ”って言われる気がして」
喉の奥が苦しかった。
でも、美咲が隣で黙って聞いてくれてるだけで、少しずつ言葉が出てくる。
「今日の試合で勝っても……仲間と喜んでても、心から笑えなかった。
本気でやっちゃいけない気がして。
でも、本当は……諦めたくない」
拳を握ると、美咲がそっと手を重ねてきた。
その温もりに、目の奥が熱くなる。
「……碧」
「……美咲」
俺を真っ直ぐに見てくれるその瞳に、救われる気がした。
きっと俺は——この人にだから、打ち明けられたんだ。
「諦めたくない、ずっと続けていたい。
……俺も!…本気でやりたい…!!」
思わず口にしたその言葉は、弱音なのか願いなのか、自分でもわからなかった。
ただ、吐き出した瞬間、胸の奥が空っぽになったみたいで、息が震えた。
ふっと温もりが強く重なった。
見れば、美咲が両手でさっきよりも強く、俺の拳を包み込んでいる。
指先まで柔らかくて、優しくて——それだけで涙が出そうになった。
「……碧」
小さな声で呼ばれるだけで、胸が締めつけられる。
美咲は少し俯きながらも、真っ直ぐ言葉を紡いだ。
「ずっと一人で抱えてたんだね。
……苦しかったでしょ。よく耐えたねー!
えらい、偉すぎるよ、碧〜」
その声は驚くほど優しくて、まるで全部を肯定してくれるみたいだった。
俺は堪えきれず、涙が溢れる。
「俺……父さんの言葉が頭から離れなくて…!
“遊びじゃない”って、“継ぐしかない”って…
でも俺は、バスケが好きで、もっと本気でやりたいんだ」
情けないくらい震える声で吐き出すと、美咲は首を横に振った。
「情けなくなんかないよ。
夢を持って、真剣に悩めるのは、すごいと思うよ!
もう、夢を持つだけでえらい!」
そう言って、彼女は手を少し強く握ってきた。
「私ね……碧がコートに立ってる姿、忘れられないんだ。
真剣な顔でボール追いかけて、誰よりも輝いてたし。
あのとき、私の胸まで熱くなったの。
だから……そんな碧の夢が、誰かに“勝手に決められた道”で潰されるなんて、嫌だ」
「……美咲」
声が掠れる。
どうしてこんなにも、俺の弱さを受け止めてくれるんだろう。
彼女は少し恥ずかしそうに微笑んで、続けた。
「きっとね、簡単な道じゃないと思う。
でも……碧ならできるって、私は信じてる。
だから、もし立ち止まりそうになったら、そのときは私が隣にいるよ」
心臓が大きく鳴った。
その言葉は、慰め以上に強くて甘い。
俺の中で、誰にも見せられなかった弱さと夢が、やっと肯定された気がした。
「美咲が、いてくれるなら、なんだってできるかもね」
無意識にそう呟いていた。
美咲は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに頬を赤くして、笑った。
——その笑顔を見て、胸の奥に差し込んでいた重苦しい影が、少しだけ晴れていった。
——そんな美咲が、俺は世界でいちばん好きなんだ。