ベッドの隣は、昨日と違う人
41話 次の楽しみ
ビンゴ大会はそのまま続いていて、司会の声と笑い声が会場のあちこちで弾んでいた。
ステージ前では、次々に景品を受け取る人たちが写真を撮られている。
「……はぁ……」
思わず、小さく息を吐く。
「お疲れ」
大地がウーロン茶のグラスを差し出した。
「……ありがとう」
一口飲んで、ようやく落ち着いた気がした。
「……なぁ」
大地が、少し間を置いて口を開く。
「温泉」
「……うん」
「ほんとに、行くことになったな」
みいなは、手にしたビンゴカードを見つめたまま、小さく笑った。
「ね……まさか当たると思ってなかった」
「しかも1等」
言い切った瞬間、頬がじわっと熱くなる。
「嫌なら、別に――」
「嫌じゃないよ」
被せるように言ってから、みいなは一瞬だけ黙った。
「……嫌じゃ、ない」
言い直す声は、少しだけ小さかった。
大地はそれ以上突っ込まず、肩をすくめる。
「じゃあ、行くか」
「……うん」
「いつ行く?」
「え、もう決めるの?」
「だって、期限あるだろ」
「……あるね」
二人で顔を見合わせて、くすっと笑った。
「土日とか?」
「……大地、割と空いてるの?」
「土日も仕事の時もあるけど。調整はできる」
その言い方があまりにも自然で、みいなは胸の奥が少しだけ温かくなる。
「……ありがと」
「なんで礼言われてんだ」
「だって……一緒に行ってくれるんでしょ」
大地は一瞬だけ視線を逸らし、グラスを口に運ぶ。
「……そりゃ、そうだろ」
みいなは、その横顔を盗み見る。
(……なんでだろ)
さっきまで胸に引っかかっていた拓也のこと。
彼女がいたこと。
あの場面を見たときの、ちくっとした痛み。
(あれ?)
今は、不思議なくらい静かだった。
(ほんとに大丈夫だ……)
答えは出ないけれど、
今、隣にいる人の存在が、やけに現実的で、あたたかかった。
「……温泉ってさ」
みいなが、ぽつりと言う。
「浴衣とか、着るのかな」
「着るだろ」
「……似合うかな」
「知らん」
即答に、みいなはむっとする。
「ちょっとはフォローしてよ」
「いや、そんなん想像したら……」
大地は一瞬だけ言葉を切って、咳払いした。
「……まあ、似合うんじゃない」
「なにそれ、雑」
「雑でいいだろ」
でも、その声は少しだけ柔らかかった。
会場では、また誰かがビンゴを当てて、歓声が上がる。
拍手に混じって、美咲の笑い声も聞こえた。
みいなは、その賑やかさを眺めながら、そっと言った。
「……今日さ」
「うん?」
「来てくれて、ありがとう」
大地は、少しだけ驚いた顔をしてから、いつもの調子で返す。
「俺は、呼ばれたから来ただけ」
「それでも」
みいなは、はにかむように笑った。
「……一人じゃなくて、よかった」
大地は何も言わず、ただグラスを軽く持ち上げた。
「……じゃあ、温泉までに」
「うん?」
「もう少し、綺麗になっとけ」
「なにそれ!」
「冗談」
そう言いながら、ほんの少しだけ、照れたように視線を逸らす。
ビンゴ大会は、まだ続いている。
でも、みいなにとっては――
もう、次の楽しみが、はっきりと見えていた。
ビンゴ大会はそのまま続いていて、司会の声と笑い声が会場のあちこちで弾んでいた。
ステージ前では、次々に景品を受け取る人たちが写真を撮られている。
「……はぁ……」
思わず、小さく息を吐く。
「お疲れ」
大地がウーロン茶のグラスを差し出した。
「……ありがとう」
一口飲んで、ようやく落ち着いた気がした。
「……なぁ」
大地が、少し間を置いて口を開く。
「温泉」
「……うん」
「ほんとに、行くことになったな」
みいなは、手にしたビンゴカードを見つめたまま、小さく笑った。
「ね……まさか当たると思ってなかった」
「しかも1等」
言い切った瞬間、頬がじわっと熱くなる。
「嫌なら、別に――」
「嫌じゃないよ」
被せるように言ってから、みいなは一瞬だけ黙った。
「……嫌じゃ、ない」
言い直す声は、少しだけ小さかった。
大地はそれ以上突っ込まず、肩をすくめる。
「じゃあ、行くか」
「……うん」
「いつ行く?」
「え、もう決めるの?」
「だって、期限あるだろ」
「……あるね」
二人で顔を見合わせて、くすっと笑った。
「土日とか?」
「……大地、割と空いてるの?」
「土日も仕事の時もあるけど。調整はできる」
その言い方があまりにも自然で、みいなは胸の奥が少しだけ温かくなる。
「……ありがと」
「なんで礼言われてんだ」
「だって……一緒に行ってくれるんでしょ」
大地は一瞬だけ視線を逸らし、グラスを口に運ぶ。
「……そりゃ、そうだろ」
みいなは、その横顔を盗み見る。
(……なんでだろ)
さっきまで胸に引っかかっていた拓也のこと。
彼女がいたこと。
あの場面を見たときの、ちくっとした痛み。
(あれ?)
今は、不思議なくらい静かだった。
(ほんとに大丈夫だ……)
答えは出ないけれど、
今、隣にいる人の存在が、やけに現実的で、あたたかかった。
「……温泉ってさ」
みいなが、ぽつりと言う。
「浴衣とか、着るのかな」
「着るだろ」
「……似合うかな」
「知らん」
即答に、みいなはむっとする。
「ちょっとはフォローしてよ」
「いや、そんなん想像したら……」
大地は一瞬だけ言葉を切って、咳払いした。
「……まあ、似合うんじゃない」
「なにそれ、雑」
「雑でいいだろ」
でも、その声は少しだけ柔らかかった。
会場では、また誰かがビンゴを当てて、歓声が上がる。
拍手に混じって、美咲の笑い声も聞こえた。
みいなは、その賑やかさを眺めながら、そっと言った。
「……今日さ」
「うん?」
「来てくれて、ありがとう」
大地は、少しだけ驚いた顔をしてから、いつもの調子で返す。
「俺は、呼ばれたから来ただけ」
「それでも」
みいなは、はにかむように笑った。
「……一人じゃなくて、よかった」
大地は何も言わず、ただグラスを軽く持ち上げた。
「……じゃあ、温泉までに」
「うん?」
「もう少し、綺麗になっとけ」
「なにそれ!」
「冗談」
そう言いながら、ほんの少しだけ、照れたように視線を逸らす。
ビンゴ大会は、まだ続いている。
でも、みいなにとっては――
もう、次の楽しみが、はっきりと見えていた。