ベッドの隣は、昨日と違う人
40話 本当に引き当てた運





マイクから、二次会の進行役の声が響いた。

「それでは、みなさまお待ちかね。ビンゴ大会をはじめます!
入り口でお配りしたビンゴカードを、お手元にご用意くださーい!」

会場のあちこちから、わっと声が上がる。
テーブルの上でグラスが鳴り、椅子がきしむ音が重なった。

「あ、始まるよ」

みいなが小さく言うと、大地は頷きながらビンゴカードを引き寄せた。

「ほんとだ。こういうの、当たったことないけどな」

「わたし、当てるよ。なんか今日、いける気する」


番号が読み上げられるたび、カードに穴を開ける音が会場に広がる。
そのリズムに合わせるように、みいなの気持ちは少しずつ現実に戻ってきていた。

(やっぱり……拓也くんを見たのに……)

自分でも不思議だった。
胸が締めつけられるような痛みも、涙が出そうな感じもない。

(本当に平気だ……)

「……リーチの方ー!」

司会の声に、会場がざわめく。

「わたし……あ、リーチ!」

思わず声が弾んだ。

「まじで?すげぇ」

番号が、ひとつ、またひとつと読み上げられる。
会場の熱が少しずつ上がっていく。

「……次の番号は――」

一瞬の間。

「12!」

「……ビンゴ!!」

自分でも驚くほど、はっきりと声が出た。
周囲の視線が一斉に集まる。

「え、まじ?!」

大地が思わずこちらを見る。

司会がすぐに続けた。

「おーっと、早いですね!
では、1等の方!ステージへどうぞ!」

「えっ……?」

みいなの足が一瞬、床に縫い止められたように動かない。

「……い、行ってくるね」

大地にそう言って立ち上がると、拍手と冷やかしの声に背中を押される。

ステージに上がると、ライトが少し眩しかった。

「では、お名前をどうぞ!」

「あ、川崎……美衣奈です」

「ありがとうございます。
新婦さんとのご関係は?」

「同僚です」

会場から「おおー」と声が上がる。

「ズバリ!1等は――温泉ペア旅行券です!
どなたと行かれますか?」

一瞬、言葉に詰まった。

「……あ、えっと……」

そのとき。

「貸して、マイク」

横からするりと美咲が入り込んできた。

「今日、わたしのお願いでわざわざ来てくださった、
みいなの高校時代からの友人――大地くんと一緒に行ってほしいでーす!」

「え、ええっ、美咲……!」

会場が一気に沸く。

「ねっ、いいですよね?大地くん」

突然振られ、大地は一瞬固まったあと、小さく息を吸った。

「……は、はい」

「ヒュー!」
「いいぞー!」

冷やかしと拍手が飛び交う。

「はい、マイクありがと」

司会が受け取り、にこやかにまとめる。

「それではぜひ、お二人で楽しんできてください!」

拍手がもう一度、会場を包んだ。

「最後に、新郎新婦に一言お願いします!」

みいなはマイクを握り直し、深く息を吸った。

「……今日は本当におめでとうございます。
これからもずっと仲良く、幸せでいてください。
わたしとも、同僚として、友達として……これからもよろしくお願いします」

「ありがとう、みいな」

美咲がウィンクし、陽貴が丁寧に頭を下げる。

ステージを降り、大地のいるテーブルへ戻っても、顔が熱いのが自分でもわかった。

「……おめでとう」

大地が小さく言う。

「……ありがとう」

そのやりとりを、少し離れた場所から拓也は見ていた。

視線が、大地の横顔に止まる。
拍手と笑い声の中で、拓也はグラスを傾けた。


一方でみいなは、温泉ペアチケットを握りしめながら、胸の奥で思っていた。

(ちゃんと、終わったんだ)

さっき感じた“平気”の正体が、ようやくわかった気がした。




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