ベッドの隣は、昨日と違う人

◆サイドストーリー◆ 〜大地編〜

独白〜きっかけの日〜




◆ここからは少し時間をさかのぼり、
大地の視点でお届けします。

この章は、本編とは別の視点から描かれた番外編です。
物語の余韻をそのまま味わいたい方は、完結後にお読みいただいても問題ありません。




―――




みいなを誘った、あの日──



高校の同級生、富田から出張でこっちに来るって連絡が入った。

久しぶりだな、と思いながら、
ついでに、みいなの顔が浮かぶ。


……連絡するの、いつぶりだ?
たぶん、二ヶ月くらい。

元気かな、あいつ。


📱
「え?富田くん?
うん、行く行く!
場所とかまた連絡して~!」

画面越しでもわかる。明るい。

お、元気そうだな。

……って、一瞬は思ったけど、
会うとすぐに違和感が引っかかった。

テンションはある。
でも、どこか軽い。

この感じ、前にも見たことがある。

富田は、たぶん気づかないだろう。
あいつは、いつもそうだ。

当日、三人で会っても、みいなは普通だった。
よく笑って、ちゃんと話して。

でも俺は、その笑顔の奥に、
小さな疲れを見つけてしまった。

あ、これ——
なんかあったな。

案の定、富田を駅まで送ったあと、
もう一杯飲むって流れになった。

駅から少し離れたバル。
二人で向かい合って座る。

グラスを持つみいなの手が、
ほんの少しだけ落ち着かない。

聞かなくてもわかる。
男のことだ。

しかも、あまり大事にされてないやつ。

みいなは、軽い女じゃない。
でも、流されやすいところがあるのも、
俺は知ってる。

しかも今、明らかに傷ついてる。

……なんで、そんなやつのせいで、
こんな顔してんだよ。

俺だったら——

……え?

何考えてんだ、俺。

男に腹が立ってる?
それとも、みいなが傷ついてるのが、
ただ許せないだけか?

今まで何度も相談は受けてきた。
でも、こんなふうに思ったのは、初めてだった。




「またなんかあったら、いつでも連絡しろ」

そう言って、その日は別れた。

言えることは、そこまでだった。
それ以上を口にしたら、
自分の立ち位置がずれる気がしたから。

それからも、みいなのことは気になっていた。
けど、向こうから連絡はない。

俺から
「あいつとどうなってる?」
なんて、聞けるはずもなかった。

聞いた瞬間、
踏み込んでしまう。
そう分かってた。




二週間後、
みいなからメッセージが来た。

📱
「お願い事があって。
会って話せる?」

……お願い事?
そんなの、初めてだ。

当日、
みいなの好きな地鶏屋を予約してあるって伝えると、
あいつは、はっきり嬉しそうな顔をした。

その表情を見た瞬間、
胸の奥が、少しだけざわつく。

ダメだ。
俺は——

……本当に、
みいなを?

聞けば、
同僚の二次会に同伴してほしい、という話だった。

俺を選んだ、という事実は、
正直、嬉しい。

でも同時に、
あいつとも、まだ切れていないらしいことも分かった。

飯の途中、
みいなのスマホが震えた。

あいつからだって、聞いてしまった。

——今から来れない、だって?

胸の奥が、ひやっとする。

もし、ここで
みいながあいつに会いに行ったら。

行くんだろ。
……ホテル。

今、みいなが。
そう考えたら……
この日はきっと、眠れなかった。

でも、
みいなは首を横に振った。

「断るよ」

その一言で、
体の力が抜けた。

結局、
みいなは改めて、
二次会に来てほしいと正式に頼んできた。

俺は、了承した。

その代わり、
今日は最後まであいつのところへ行かない、
そう約束させた。

……みいなのため。
それも、確かにある。

でも、
それだけじゃないことも、
もう否定できなかった。





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