片恋はおわらせるつもりだったのに、強引に囲い込まれて愛されています!?
 いつもの場所に腰かけると、彼はポットに手を伸ばす。慣れた手つきでカップにお茶を淹れて、片方を私の前に置いた。

「このことを責めてしまったら、いつもの従者の方も可哀そうですし」

 訪問の連絡と許可取りは、彼の従者が邸に来て行っている。手紙だと連絡が遅れるということから、彼はこの形を好んでいた。もちろん、手紙のときもあるし、日常的なやり取りは手紙だ。ただ、突然の訪問に関してはこういう形式というだけ。

「――ところで、本日はどんなご用件でしょうか」

 私の言葉に、目の前の彼――アルスさまは驚いたように目を見開いた。

 そりゃそうだ。私が用件の確認をすることはない。

 毎回いきなり近況の報告をし、他愛もない会話になる流れだから。

「イリュア、なにかあったの?」

 察しのいいアルスさまは、私になにかがあったと気づく。私の心臓が大きな音を立てた。

「……別に、なにも」

 嘘だ。私はアルスさまに縁談があると知ってしまった。同時に、距離を置くと決意もした。

 なのに……伝える勇気が出ない。言いたくないと思ってしまう。

「用件がないのなら、来ないほうがいいかと思いまして。……だって、私たちそろそろ年頃ですから」
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