片恋はおわらせるつもりだったのに、強引に囲い込まれて愛されています!?
 子供時代ならまだしも、年頃になって異性の邸に行き来するのは褒められたことじゃない。

(本来なら、もっと早くに指摘するべきだった)

 でも、彼との時間が楽しくて、一緒にいることが嬉しくて。そのせいで、今の今まで目を逸らしてきた。

 ……それももう、おしまいにする。

「私もアルスさまも、今後について真剣に考える時期です。……結婚とか」

 さりげなく出した単語に、アルスさまが動揺したのがわかった。

 私が知らないと思っていたのかも。まぁ、ろくに友人もいないので、無理もない。

 メイドたちの会話を耳にしなかったら、知らないままだったのは容易に想像ができる。

「イリュア、もしかして」
「――ごめんなさい。知ってしまいました」

 彼から別れを告げられるくらいなら、自ら別れを告げたい。

 その一心で、頭を下げる。アルスさまはなにも言わなかった。

「とてもいい縁談があるそうですね。その方と結婚すれば、出世もできると」

 都合の悪いとき、感情が表に出ないのは便利だった。こんな形で便利さを知りたくなかったし、使いたくもなかったけど。

「ここに通っていたら、その方に勘違いされてしまいます。今後、来ないでください」

 アルスさまの顔を見たくなくて、うつむいた。感情が表に出ないとはいえ、ないわけではない。

 心は悲鳴を上げ、失恋の痛みを覚えている。初恋をこんな形で終わらせたくなかった。だけど、仕方がない。

(はじめからわかっていたわ。アルスさまと私では住む世界が違って、一緒になることはできないと)

 わかっていたくせにこんなに傷ついているのは――私の覚悟が足りなかったからということにしておこう。
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