君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 けれど、ひとたび経営者の顔になればそれはまったく違うものになるのだろうことは、晴菜でも容易に想像できた。だからこそ、奏汰の短いメッセージの裏に、どれほどの圧力がかかっているのかを想像してしまう。
 晴菜は大きく息を吐きながら、乱れていく思考を押しのけるようにカウンター内のグラスを整えていく。

「――始まるぞ」

 松本が低く告げた直後、司会者の声がマイク越しに響き場内に拍手が起こる。
 主催者の簡単な挨拶ののちに、形式ばった乾杯が続いた。グラスの触れ合う音が波のように広がり、そこから一気に空気が動き始める。

「シャンパン二つ」
「かしこまりました」
「ジントニック、ライム多めで」
「柑橘系のノンアルある?」
「はい、ございますよ」

 レセプションが始まれば、感傷に浸る余裕などなかった。華やかな喧騒の中で次々と舞い込むオーダーをテンポよく松本とさばいていく。
 今日は松本と二人体制なので、最低限の言葉だけで呼吸を合わせなければならない。動線が被らないよう、松本の動きを確認しながら、晴菜は黙々と手を動かしていた。

「すみません。おすすめをお願いできますか」
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