君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 抱き寄せれば、彼女は言葉では拒むが本心からは拒まない。けれど、その唇から「好きだ」という言葉が零れたことは、一度としてなかった。自分を選ぶ理由の言葉も、渡された記憶がない。立場で囲い、身体で繋ぎ、逃げ道を塞いだつもりでいただけだ。

 ――飼い慣らしているつもりで、その実、飼い慣らされていたのは俺のほう、……か。

 彼女が時折見せる、何かを諦めたような穏やかな微笑みが、今の奏汰には何よりも恐ろしかった。もし明日、「そろそろ一ヵ月経つから」と背を向けられたら、自分に彼女を止める正当な権利などない。
 だからこそ、この縁談話だけは、彼女が絶望して身を引く前に叩き潰しておかなければならないというのに。

 ――穂乃果は……どう動いている?

 数年前に持ち上がった自分との縁談を嫌がっていた穂乃果にも事の顛末を知らせるメールを送ったものの、状況を把握した旨以外の返答がないため、彼女が現状をどう考え、どう動いているのかは不明だ。

「……はぁ」

 どの方向から見ても芳しくない現状に、再び大きなため息が落ちていく。
 秘書から告げられた『食事会』の文字が、脳裏にこびりついて離れない。隆之は結局、沈黙という名の肯定を選んだのだ。

 ――食事会……
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