【完】君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 ほどなくして、廊下を歩く足音が耳朶を打つ。襖が静かに開き、隆之が現れた。

「早かったな」
「今日は駅からの道が空いてた」

 ネクタイを締め直す隆之が奏汰に声をかけるも、彼はそっけなく言葉を返した。微妙な距離感が晴菜の身をさらに縮こまらせていく。
 隆之は一瞬だけ晴菜に視線を向け、軽く会釈すると、奏汰の隣に腰を下ろした。
 三人が揃った座敷には、微妙な沈黙が落ちる。その静寂に耐えかねたように、隆之が小さく息を吐いた。

「……晴菜さん」

 名を呼ばれ、晴菜の肩がわずかに跳ねる。

「今日は来ていただいてありがとうございます。気まずい場だって分かってて、引き受けてくれたんでしょう」

 責めるでも、探るでもない声音だった。ただ事実を確認するような淡々とした口調に、晴菜は背筋を伸ばした。

「いえ……必要だと思ったので」
「そう、ですか。今日の席は、和やかに終わる類いのものじゃありません。それだけは覚悟を――」
「兄貴」

 隆之の言葉に奏汰が低く割り込む。その声色に、空気が一段冷えた。

「雑談するために呼んだわけじゃねぇだろ」

 まるで突き放すような鋭さをもった言葉に、隆之がわずかに眉を上げる。
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