【完】君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
「ええ、もちろんですわ」

 麗奈はにこやかな微笑みを貼り付けたまま、視線を隆之へと向けた。その瞳は穏やかだが、この場を支配しようとする冷たさが透けて見える。

「氷室と高坂。両家に必要なのは、地に足の着いた経営基盤と、時東が持つ富裕層へのコネクションです。感情に任せて『酒屋の娘』を囲うなど、若気の至りでは済まされません」

 その言葉に、隣の奏汰がピクリと肩を揺らした。晴菜がゆっくりと視線を向けると、そこにはテーブルの下で拳を握り締め、必死に感情を押し殺している奏汰の横顔があった。彼の端正な輪郭が、怒りのあまり硬い石像のように強張っている。
 自分の存在が、このような状況を生み出している。その申し訳なさと麗奈への恐怖で、指先が微かに震えた。
 隆之は眉間を指で押さえ、声を絞り出すように重苦しく口を開いた。

「経営者として、時東のネットワークは無視できない。海外シェアを広げる最短ルートであることは確かです。稔さんもそう思われませんか」

 話を振られた稔は、手にしていた箸を静かに置きゆっくりと顔を上げた。その視線はまっすぐ隆之に向けられている。

「最短ルートであることと、安全な道であることは別だ」

 柔らかい口調だったが、その声には一切の妥協を許さない明確な含みがあった。

「時東は安全でない、と?」
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