【完】君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 稔も穏やかな微笑みを浮かべ、言葉を引き継いだ。

「覚悟のない者に、そんな目はできない。晴菜さん、高坂としても、あなたを心から歓迎します」

 麗奈はしばらく、奏汰と晴菜を睨むように目を細めていた。端整な麗奈の唇が、わずかに苦々しく歪んだ。

「……ずいぶん情に流された決断ですこと」

 しかし、それ以上の反論は続かなかった。頼みの綱であった隆之も、弟である稔も、もはや微塵も揺らいでいないことを悟ったのだろう。
 麗奈はやがて、音もなく扇子を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。乱れのない所作で着物の裾を払う。

「好きになさい。後悔なさっても、私は知りませんわ。穂乃果、私は先に東京に戻りますので」

 それだけ言い残し、麗奈は座敷を後にした。襖が静かに閉まる音が、長い攻防の終止符のように響く。
 しばしの沈黙のあと、隆之が大きく息を吐いた。

「まったく、これほど胃に悪い会食はそうそうないな」

 隆之が重い肩を落とし、自嘲気味にぽつりと漏らした。その当主らしからぬ本音に、隣にいた稔がこらえきれずに小さく吹き出す。凍てついていた座敷の空気が、その笑い声をきっかけにふっと春の陽だまりのように和らいだ。
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