【完】君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
「兄貴が持ち込んだ話だろう、何言ってんだ」
「それはそうだが……こんなことになるなんて思ってもいなかったんだ、勘弁してくれ」

 奏汰が呆れたように隆之へ視線を向けると、彼はばつの悪そうに頭を掻いた。

「奏汰があそこまで啖呵を切るとは想定外だったな。昔は算数のテストで泣いてたくせに」
「小三の話を今出すな」
「しかも九十八点でだぞ」
「二点は二点だ」

 兄弟の軽やかなやり取りに、稔がもう無理だと言わんばかりに盛大な笑い声を上げた。

「氷室の将来は安泰だな。細かすぎて」
「経営は一円からだろ」
「ほら見ろ、やっぱり数字だ」

 稔が降参とばかりに両手を上げると、座敷に遅れて笑いが広がった。張り詰めていた空気が、ようやくほどけていくようだった。
 穂乃果もふっと安堵の吐息をつく。彼女は晴菜に視線を向け、やわらかく微笑んだ。

「晴菜さん、本当にありがとう。あんなふうに、お母様に正面から向き合ってくれて……私も勇気をもらえたわ」
「いえ……私の方こそ」

 晴菜は控えめに首を振った。

「穂乃果さんの真っ直ぐな言葉があったからこそ、です。あなたの言葉がなければ、私も覚悟を決められなかったと思います」
< 161 / 174 >

この作品をシェア

pagetop