【完】君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 低く囁くような声音にわずかに揶揄うような響きが混じる。初めて出会った鎌倉での一夜を指しているのだと気づくまで、そう時間はかからなかった。

「あの時、ほんっとに手馴れてるって思った」
「ま、そう思われても仕方ねぇとは思ってる」

 わずかばかり棘を持った言い方をしてしまったが、奏汰はあの時と同じく大して気にしていなさそうだ。
 あの夜は、互いに名乗りもせずただ刹那に身を委ねただけだった。
 けれど今は違う。過去も、現在も、全てを乗り越えて――互いを求めている。
 寝室のドアが静かに開き、月の光が差し込むシーツの海が視界に飛び込む。奏汰は晴菜をゆっくりと降ろし、覆い被さるように両手をついた。

「もう……あんたがいない日常なんて想像もつかねぇ」

 真っ直ぐに晴菜を見つめる瞳には、冗談を言っているような軽薄さは微塵もなく、射抜くような鋭さだけを孕んでいた。
 奏汰の指先が晴菜のシャツのボタンに掛かり、一つ、また一つと、もどかしさを押し殺すような手つきで解いていく。
 あらわになった鎖骨に、熱い唇が落とされた。吸い付くような感触に晴菜の背中が跳ねる。

「……奏汰」
「今夜は黙って俺だけを感じてろ」

 混ざり合う吐息、高鳴る鼓動。奏汰の手が晴菜の肌を滑り、確かな体温で彼女のすべてを支配しようとしていた――
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