【完】君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
「私だって、昨日検索しすぎて逆に不安になったもん。胎嚢も心拍も確認できなかったらどうしようって」
「だからネットはやめろと言っただろ」
「理屈で止められたら苦労ないから」

 二人の間に、ふっと笑いが落ちる。待合室の壁時計が、コチコチと静かに秒を刻んでいく。その音を聴きながら、晴菜は自分の左手の薬指を無意識に撫でていた。
 晴菜は年末をもって勤め先のギャレットを退職し、奏汰と元旦に籍を入れた。酒蔵にとって一年の始まりは特別な日であり、区切りとしても縁起がいい。だが、寒造りの最盛期に披露宴など開けるはずもない。次男とはいえ副社長である奏汰が抜ければ、現場は確実に回らなくなる。理想よりも段取り、家業を背負う以上それが最優先と理由から、式は今月末、桜が散りきる頃に、身内と親しい者だけを招いたささやかな会にする予定だった。
 ゆるりと視線をあげると、中待合室の壁には赤ちゃんの写真が並んでいる。生まれたばかりの小さな手、小さな足。晴菜は無意識に自分の腹部へ視線を落とした。まだ何も変わらないはずなのに、そこに確かな命があるのだと思うと、胸の奥がじんわりと熱くなる。
 ふと、奏汰が思い出したように口を開いた。
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