狼少年
携帯で時刻を確認すると、駅から学校までの時間と、始業チャイムが鳴る時間はほぼ同じだった。
早足で坂道を上る。桂は横で涼しげに歩いていて、少し恨めしく思った。
「男が苦手なの。」
「…は?」
唐突に話し出した私に、桂は訝しげな視線をよこす。
「年下とかならまだ大丈夫だけど、同年代から上は結構…だいぶ苦手。だからあんまり近づきたくないし近寄らないでほしい。」
「…。」
小声で独り言でも言ってるみたいな音量で、私はすぐ横を歩く桂にそう告げた。桂は何かを考えるかのように黙って歩く。
ほんの興味本位で聞いてきただけだ。これで離れてくれるはず。
私は桂からそっと離れて、一人で校舎に入った。どっちみち隣の席だから顔を合わせないことは不可能なんだけど。
鞄を置いて一息ついたときに、桂は私の机に手を置いた。
びっくりして桂を凝視する。
まだなんかあるの?
「安心しろよ。」
「は…?」
桂がかがんで、顔を近づけてきた。私はわけがわからないまま、身を固くした。
「俺、女に興味ねぇから。」
耳元でそうつぶやくと、彼は何事もなかったかのように自身の椅子に腰をおろし、突っ伏した。耳には、イヤホンが装着されたままだ。
「なに、今の?」
麻由に話しかけられて、私は現実に意識を取り戻した。
「わ、わかんない。」
女に興味ねぇから。
え…、桂ってゲイなの?!マジで?!!