【完結&番外編追加中】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして
二人で月が照らす夜道を歩く。

会話はなかった。

でも手はしっかり握っていた。

あっという間に自宅に着いてしまう。

もっと一緒にいたい。

「勇凛くん、一緒に住もう」

そう言うと、勇凛くんは少し困った表情をしている。

「実は……俺の新しく住むところはもう用意されてるみたいです」

「え……?」

じゃあ一緒に住めないの……?

やっと夫婦として前に進めると思ったのに。

「そうなんだ……」

そうやって私たちを物理的に離そうとしてくるんだ。

本当に腹が立つ。

「でも、用意されただけです。俺がどこにいるかは俺の自由です」

「うん」

その言葉に安心した。

「でも、今の状況で二人で暮らすのが少し不安になってます」

「……どうして?」

「自分もそうですけど、七海さんにも被害があるので、精神的に全く余裕がないです」

私はそれでも大丈夫だけど……。

勇凛くんはまだ学生。

会社で仕事をすることに慣れるまでは大変だと思う。

私を思いやる余裕なんてきっとない。

ここは自分の気持ちを抑えた方がいい。

「わかった!じゃあ、勇凛くんの心の準備ができるまで待つ!」

勇凛くんの表情が柔らかくなった。

「ありがとうございます」

勇凛くんが私を抱きしめてくれた。

「……七海さん」

「うん」

「いいですか?今日……」

それが何を意味しているかわかった。

「いいよ」

私もそうしたかった。
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