社畜女の愛され白書〜三十路の社畜OLは出会った翌日に八才年下男子と結婚しました〜
「七海さんもやってみてください」

まちがいさがしを押し付けられた。

「うーん……間違い11個……」

・・・。

なぜか一つだけ見つからない。

「え、どう見ても全く同じにしか見えないんだけど」

「そうなんですよ、全然見つからないんです」

──そのあと、面会時間ギリギリまで勇凛くんとまちがい探しに勤しんでいた。

「もう時間ですね」

「あ、もうそんな時間なんだ。勇凛くんありがとう」

「……嬉しいです」

「なにが?」

「こうやって一緒に何かに没頭できるって」

「そうだね……」

勇凛くんの反応が初々しい。

別に私が初めての彼女とかではないのに。

彼女……ではない。

妻(仮)なんだ。

この子はこの前知り合ったばかりの大学生の男の子、なんだけど、私の夫(仮)であって、なんだか複雑。

「七海さんとなら、うまくやっていけると思うんです。これからずっと」

ずっと──

この子との未来は全く想像できないけど、もし婚姻届が受理されてしまったら、現実とこの子に真剣に向き合わないといけない。

勇凛くんは真剣なんだから、尚更。

ただ付き合ってるなら別れるのは簡単。

でも、結婚していたら容易ではない。

ただの恋愛では済まない。

「じゃあ、明日また来ます。」

「……うん」

「七海さんゆっくり休んでくださいね」

勇凛くんの穏やかな笑顔。

なんの計算もない。

「じゃあ」

爽やかな青年は、去っていった。

非現実的な状況。

私のことよりも、勇凛くんの未来を奪ってしまったような感覚に陥いる。

私は意を決して相談することにした。
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