【完結&番外編追加中】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして
酔った二人を店から出し、勇哉さんをタクシーに押し込めた。

「じゃあ、お疲れ」

「はい、色々すみません……」

タクシーのドアが閉まると

「俺まだ帰りたくない……」

勇哉さんがつぶやいた。

「じゃあどうしますか?」

「……俺んち来てよ」

──え

「なんでですか?」

「一人でいたくないんだよ」

なんで野郎の家に行かないといけないんだよ。

まさか泊まり……?

嫌な予感がする。

「お客さんどうします?」

タクシーの運転手に聞かれる。

「勇哉さん、家の住所言ってください」

仕方ないから玄関前まで連れて行くことにした。

◇ ◇ ◇

勇哉さんの家は、高級マンションの高層階だった。

「勇哉さん、着きましたよ」

勇哉さんを抱えてマンションの入り口まで来た。

「森川くん、今度お詫びするから、今日家にいて」

最悪だ──

とりあえず玄関先に置いて逃げよう。

勇哉さんをひきずってエレベーターに乗って、高層階で降り、部屋まで行った。

勇哉さんは若干酔いが冷めたのか、冷静になったのか、その後は自分から部屋に入った。

「迷惑かけてごめん。ちょっと、結婚のことでナイーブになってたんだよね」

「そうなんですね」

やや憂いがある勇哉さんの表情が印象的だった。

「俺、兄貴があの会社のために犠牲になったの知ってるからさ……。俺が幸せになっちゃいけない気がするんだよね」

「え?」

意外だった。

お兄さんのことを気遣っているのか?

というか、犠牲って?

何が何だかわからない、何があったんだ?

「何があったか聞いてもいいですか……?」

「えーとねー。親父がポンコツだってこと。それだけ」

端折りすぎだろ。

でももうこれ以上この人から聞き出すのは無理だ。

踏み込むとこの人の負の感情に飲み込まれそうな気がする。

「森川くん、少しだけ上がってってよ」

「……はい」

勇哉さんについて行くと、広いリビングに連れて行かれた。

そこには生活感が全くなかった。

まるで家具がただ飾られているだけのような。

「俺ほとんど家に帰ってないんだよね」

いつも自由に人を振り回して、飲んで騒いで寂しさなんて微塵も感じていなかった。

でも、今ここにある全てが寂しさを物語っていた。

「七海ちゃんと勇凛が羨ましい。結婚するならああいう風になりたいよね」
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