【完結&番外編追加中】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして
──勇凛くんが会社に入社してから半年後

その日は私の誕生日だった。

勇凛くんが私のためにお祝いのケーキを作ってくれた。

ケーキにチョコペンで文字が書いてある。

ハートの中に

“I LOVE NAMI”

さりげなく伝える愛もいい。

だけど、この勇凛くん直球の愛が、嬉しい。

「七海さん誕生日おめでとうございます」

「ありがとう。ケーキ作ってくれて嬉しい」

ケーキを切るのが勿体無い。

私は写真を撮った。

「もう31かぁ」

そう呟くと、勇凛くんは真剣な顔で私を見た。

「七海さん、相談があるんです」

「うん。なぁに?」

言いにくそうにしている。

「このタイミングで言っていいか悩んだんですけど……」

何……?

「子供について、七海さんの考えを聞きたくて」

──子供

欲しいと二人で言っていた。

そんな未来を夢見ていた。

──でも

「欲しいと思ったんだけど……悩んでる」

「何をですか?」

「出産が怖い。あと、産まれたら二人の時間がなくなっちゃう気がして……」

──沈黙

「そうですね……。産むのは俺じゃないので、そこは七海さんの意見を尊重します。俺も七海さんと二人で過ごす時間が大好きです」

優しく微笑む勇凛くん。

勇凛くんならそう言ってくれると思っていた。

だからこそ、勇凛くんの希望に応えられないのが辛い。

年齢的にそんな悠長に考える余裕もない。

でも急ぎたくもない。

ケーキを二人で食べ終わって、食器を片付けて、それぞれ寝る準備をする。

新居に引っ越すタイミングで、新しいベッドを二人で買った。

セミダブルのベッド。

二人で毎日抱き合って寝ている。

勇凛くんの匂いと温もりに包まれながら。

この幸せは、誰にも邪魔されたくなかった。

──勇凛くんが寝た後

私はまだ起きていた。

ふと頭に浮かんだのは、勇凛くんが子供を笑顔で抱っこしている姿。

矛盾している。

勇凛くんと二人でずっといたいという気持ちと、勇凛くんのために子供を産みたいという気持ち。

二つが心の中でせめぎ合っていた。
< 225 / 228 >

この作品をシェア

pagetop