前世王子アイドルグループ~僕たちは君の一番星になりたい☆。.:*・゜

*学園プロモーションの撮影

 当日は僕が生徒たちを仕切ることになった。人前に出ることは以前より緊張感は薄くなったものの、それでもまだドキドキする。だって、仕切るなんて普段しないから慣れていないし……。

 放送室のカメラの前に左かられんくん、みずっきくん、僕、そたくん、しーおんくんの順にプリレボが並ぶ。
 目をギュッと閉じながら胸に手を置くと静かに深く呼吸をした。僕の横にいたそたくんが僕の肩を「エネルギーだよ」と言いながら、とんとんと優しく叩いてくれた。続いてみずっきくんもそたくんの真似をしてエネルギーをくれた。お陰で緊張が少しほぐれて僕の体がふわっと軽くなった。

 カメラのボタンが押されると全校生徒に向けて話し始めた。

「み、みなさん。こんにちは! これから撮影を始めます! それではみなさん、よろしくお願いします!」

 あぁ、声が裏返っちゃったな……。

落ち込んで次の言葉を言えないでいると「続き、言える? 変わろうか?」と、そたくんがこっそり聞いてきた。僕は迷わず首を横に振る。だって、できそうなことは自分がしたいから。

 ふたりで頷きあうとカメラに視線を向けた。

「全体のスケジュールですが、映像の順番通りに撮っていくので、まずは僕たちの撮影からやります。その間、みなさんには待機してもらいます。僕たちが来たらお芝居をよろしくお願いします。あと、映らない場所で見学しても大丈夫です」

 僕自身は撮影風景を生徒たちに見学されるのは苦手。だけどみんなは見学したいだろうし、プリレボメンバーの真剣な姿を見ていたら、きっと僕が過去にそうだったように生徒たちのやる気もさらにいっぱいになりそうだなって考え、見学オッケーにしてみた。

 そして流れを軽く説明して「それでは、今日一日よろしくお願いします!」と深くお辞儀をした。

 カメラのスイッチをオフにすると僕たち五人は円の形になる。

「いつきん、ひと言どうぞ!」
「えっ、そたくんじゃないんですか?」
「いやいや、今日はいつきん企画だから、いつきんが!」

 僕は上目遣いでひとりひとりと目を合わせた。

「企画が成功するように、全力でがんばりますのでよろしくお願いします!」

 プリレボのメンバーはみんな優しく微笑んでくれた。



 そして一番最初のシーンを撮るために学園の玄関前に来たプリレボのメンバー。みずっきくんが袋から手作りのステッキを出して、メンバーに配った。

「前に見た時よりも進化してる、すごい!」
「でしょ? すっごくがんばったんだから!」

 えっへんとみずっきくんは自信満々に笑った。 

 全員分のステッキの棒の部分は、ゴールドのラメがキラキラしていた。そしてスイッチをオンにするとステッキの先についている大きな星がピカピカとついたり消えたりした。イエローはそたくん、レッドはれんくん、パープルはしーおんくん、ブルーはみずっきくん。そして僕のはグリーンに光った。ステッキを両手でぎゅっと握り見つめていると魔法がかかったかのように気持ちが高まり、さらにやる気がみなぎってきた。

「ありがとう、みずっきくん!」
「いつきんこそ、ありがとね」
「えっ? なんで僕にお礼?」
「楽しい企画を一生懸命に考えてくれて。そして、僕たちのことも考えてくれて!」

 お礼をあらためて言われると嬉しくてなんだか照れる。僕とみずっきくんは、えへへと微笑んだ。
 
「では、始めます!!」

 僕は気合いを入れる。

「あはっ、今日のいつきん、声大きいね!」

 しーおんくんが声を出して笑った。

「あっ、ごめんなさい……」
「いやいや、いつきんはそのぐらいがちょうどいいと思う。正直、たまに声聞こえないからさ」
「しーおんくん、アドバイスありがとうございます!」

 これからは大きな声で発言するように心掛けよう。

 僕はみずっきくんにステッキを渡すと、スマホを三脚にセットした。今日は三脚にスマホをセットして僕もみんなと一緒に映ったり、スマホで僕がみんなを撮ったりする。上手く撮れるように家でもたくさん練習をしてきた。

 自分の顔がアップに映るよう、僕はカメラの目の前に立つ。録画ボタンを押すと、録画が始まった。ここからの映像が使われる。そして次は録画ボタンを押すふりをすると歯を見せて笑顔になった。と、同時に僕とれんくんが作った曲もスタートする。

 ボタンを押した僕は玄関前で集まって何か会話をしているプリレボメンバーの輪に加わる。みずっきくんからステッキを受け取るとみんなで円になる。ステッキの先を重なり合わないように合わせた。するとピカピカとそれぞれのカラーで光る。

 それから僕はスマホを持つとみんなと一緒に校内へ。生徒のみんなは練習した通りにお芝居をしてくれて、順調に撮影は進んでいった。

 生徒がノートを運ぶシーンやそうじをするシーン、勉強しているシーンなどの中にステッキを持った僕たちが登場していく。
 
ちなみに、こんなふうに~とはお願いしているけれど各シーンのお芝居はそれぞれ自由に演じてもらう。生徒たちは初めてお芝居をするので、おそるおそるだけど演技のアドバイスもした。

 途中、とても緊張している生徒もいたけれど、僕も緊張するタイプで気持ちが分かるから、「楽しんでね!」って言ったり、一生懸命に励ましたりもした。

 ラストはグラウンドに全員が集まり、青空の中、プリレボが中心となりみんなと一緒にダンスをした。

 そして撮影は特にハプニングもなく終わった。
 僕は台に上がり、生徒たちの前に立つ。

「お疲れ様でした!! みなさんのお芝居、最高でした! 今日はご協力してくれて、本当にありがとうございました! この後はすぐに編集を始め、早く完成するように心がけます! 完成するまで眠りません!」

 お礼のために深いお辞儀をした。
 しばらくお辞儀をしていた。

「眠って~」
「待つから休んでも大丈夫だからね」

 僕の言葉に優しい言葉が返ってくる。

 涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになってきた。撮影が終わった安心感とみんなの優しさに触れたのと、あとはプリレボのみんなが僕に全てを任せてくれたんだと実感して、かな?

 本当にみんなを仕切る時が来るなんて、夢にも思わなかった。最初は「僕なんかが仕切っても良いのかな?」なんて考えていたけれど、今はみんなのお陰で「仕切っても大丈夫だったんだな」って感じられる。

「放課後残ってダンスの練習をしてくれたり小道具を作ってくれたり……色々協力してくれて。本当に、本当にありがとうございました!」

 生徒たちが解散した。帰る生徒たちの背中を眺めていると、まだ撮り続けたいなと名残惜しくなる。この撮影が終わった後の寂しさのような気持ちはプリレボの撮影が終わった時にも毎回発生する。

 撮影している時間が大好きで、現実とは違う夢のような特別な時間で、まだその世界から抜け出したくないなと感じるからかな。そしてこの特別な時間は、戻って来ない。

 楽しいと感じる時間は早く過ぎてしまう気がする。

 僕は台の上から誰もいなくなったグラウンドをしばらく見つめていた。

「いつきん、帰るよ!」

 そたくんの声が背後からした。振り向くとプリレボの四人がいた。

「撮影が終わった後って、切ない気持ちになるよね。天気は晴れなのに心の中で小雨が降ってきた感じ?」
「しーおんくんもですか? 今、僕もそんな気持ちで。夢の世界から抜け出してしまったような……」
「僕は思わないかなぁ。とにかく完成された映像観るのが楽しみでワクワクしちゃう。いつきんの作る映像、本当に楽しみにしているからね!」
「みずっきくん、楽しみにしてくれてありがとうございます! 頑張ります!」
「頑張りすぎて倒れるなよ、きちんと寝なよ?」
「れんくん、心配ありがとうございます! 必ず寝ます!」

 会話した後は全員で誰もいなくなったグラウンドを見つめた。

「そろそろ戻ろうか。今の気持ちは自分の宝物コーナーにしまっておいてさ。プリレボは次の新しい世界へ向かうよ! そして夢のような世界も作っていくからね!」
「はい!」

 そたくんの言う通りだ。僕たちはそうやっていつも前に進んでいく。

「ねぇ、みんなで手を繋いで、誰もいないグラウンド一周したい!」

 アイディアを出したのはみずっきくん。

 プリレボはメンバーの誰かが願いを口にすれば全員で現実にして叶えようとする。今も手を繋ぎ、走り出そうとしていた。

「あっ、ちょっと待ってください!」

 僕はとても重要なことを忘れていた。

「いつきん、深刻そうにどうした?」と、そたくんが心配してくれる。僕は自撮り棒を最大限に伸ばし、スマホをはめた。

「これは絶対に見逃せないです!」

 そう、プリレボが学園のグラウンドを走るなんて貴重な映像となるだろう。しかも、手を繋いで――。

 映像を想像しただけで胸がキュンとなる。

「ははは、大事なことだね!」と、しーおんくんが笑った。

 左から自撮り棒を持った僕、みずっきくん、れんくん、そたくん、しーおんくんの順に並んだ。

「じゃ、全力で走るよ! よーい、どん!」

 そたくんの声を合図に、僕たちは本気で走った。

 自然と笑いが込み上げてきて、後半疲れてきて息切れしてきたけれど、ずっとみんなで声を出しながら笑っていた。

 とても最高で幸せな時間だったな――。


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