ガラスの告白
一
三月を向かえた長野県東信。
その日はとても、眩しい朝を迎えていました。
二日前から降り続いていた雪は霧雨に変わると、十数センチに積もった雪は溶けだし、表面を氷のように透き通らさせています。
空の方では風が強く吹き荒れ、まばらに浮かぶ雨雲を、すごい速さで流し消し去っていました。
その上の太陽が、澄み切った青空と顔を覗かせていたことから、その光は街全体に残る雪をキラキラと、輝やきみせたのでした。
この町に並ぶ、間隔をあけた民家。
その中、一件の小さな家では、母親が朝食後の食器を洗っていました。
母親がそろそろだと確信すると、学校に向かう息子を見送るため、蛇口から流る水を止めています。
いそいそっと前に垂らすエプロンで手を拭き、台所すぐ横の玄関に顔を覗かせました。
そこには学生服姿で靴を履き終えた息子が、こちらを振り返り、
物静かに言葉をかけていました。
「行ってきます」
小さな声ではありましたが、微笑みを向ける息子に、
母親は未だにあの頃よりはいいかと安心を覚えていました。