ガラスの告白
「時男くん就職決まったんだって、おめでとう」

「はい。ありがとうございます」

「お母さん喜んでいたわよ。就職する会社の専務さん、私の高校時代の先輩だから、今度あったら声かけとくからね」

「あっ、はい……お願いします」

「そうそう。要(カナメ)も、あの子、県内の職業訓練所に行くから、顔見知りが残ってくれて寂しくないって」

「要。職業訓練校に行くんですね」

 時男は初めて知る卒業後の進路に、そうなんだっ、と納得していました。
 会話に出た要は、渡辺の従姉妹(いとこ)にあたる、同い年の女性のことでした。
 彼女も、幼い頃から知る顔馴染みでありましたが、渡辺と同様に接する機会が薄れていました。  


 渡辺の時のように気まずい経験をしたわけではなく、男女が大人に成長するにつれ、友人関係の付き合い方が変わったものであり、学校行事があったときや、廊下で顔を合わせたときなどでは、会話を交わすことありました。


 物静かにいつも渡辺の後にいることから、友人の妹である印象を持っていました。
 幼い頃は、将来は時男のお嫁さんになるのだと、オマセな一面も。
 今思えば、ひたしく側に居たことから、そんな言葉が出ていたのだと考えていました。
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