ガラスの告白
 周りの生徒が席に座り出すと、村上は腰に手を当て、まったくと周りを見渡す姿と、その横には、一人の女生徒が立ちつくしていました。
 時男からは不安な気持ちは静かに消え、目に映る少女に疑問を持ちました。

 村上の説明も「今日からこのクラスに……」と言う冒頭から、時男の耳に入ることはなく、ただ少女から目が離せないでいました。
 それは少女の顔や髪。細く弱々しい指先全てが、美しく輝いて見えたのでした。

 自身のまつ毛に今朝の雨が付いたせいで、光がイタズラに、そのように見せているのだと思い、時男は強く瞬きをしました。
 目を指の内側で拭うようになぞりもしましたが、しかし再びみる少女の姿はまるで、ガラスのように透き通っていたのです。
 徐々に目に映る情報に、時男は息を止め、心をたかぶらせてしまいます。


 膝上まで長さを調整したスカート。学生鞄とは違った、社会人が持つようなショルダータイプの皮製鞄。手に持つ明るいクリーム色のコートに何処か、クラスメートとは違う大人ぽさを感じます。  
 ただそれも、ガラスの姿が全ての印象を、奇しくも、美しく見せたのかもしれません。

(怖いのに、なんて美しいんだ。いや、でも病気や事故であの体に)

 いけない。と、冷静になり、恐怖を覚えた感情を否定しました。
 少女が前髪を指先で整えると、長く伸びる髪の毛は柔らかく揺れています。

(どうなっているんだ。作り物ではないのか)
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