ガラスの告白
 母親は手を止め喜びを感じるように「どういたしまして」と語り朝食の支度を再開しました。
 横顔が覗くと、小さな笑みを浮かべています。
 時男は今はこれだけでと、少女の事はもう少し、様子を見ようと考えていました。

 学校に着き教室に入るまで、時男には他にも気にかけていることがありました。
 昨日の体育授業での行動を、クラスメートに、揶揄(からか)われるのではないかと、考えていました。

(昨日は何も言われないまま帰宅できたけど、新ためて今日は)

 好意を持っているのではないかと冷やかされても、正直にガラスの姿に見えるなどとも言えず、どうしたら良いのかと悩んでいました。

 教室の入り口を抜けると、誰とも目を合わせず、席に向かいます。
 視界に入った少女の席はまだ、鞄などの荷物が置かれていないことから、まだ登校していないことが、うかがえました。
 教室内に設置された、壁掛け時計に目を向けました。

 八時十五分。

 時刻を気にし、少女が登校してこないことに、うっすらと焦りを感じていました。
 時計の長針が動くたび、教室入り口を気にしたり、時刻が狂っているのではないかとも考え、自身の腕時計と照らし合わせたりもしていました。

 担任の村上が訪れ、朝のホームルームが初まっても、少女は姿は見せることはありません。
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