ガラスの告白
 担任の妙に明るく接する態度や、親身になる保険の教員。あまり関わることのない体育教師でさえ、気を使っているように思えました。
 
 洗顔を終わらせ部屋に戻る中、母親がゴミ出しから戻ってきました。
 目についた息子が、いつもと違う表情。戸惑いを感じる態度に、母親は立ち止まり見つめています。

「おはよう。ちゃんと寝れた? アルバイトも終わって疲れが出たのかしら」

 時男は自分でも血相変えた顔に、何事もない態度を装います。

「うん、そうだね。でも大丈夫だよ」

 特に追求すわけでもなく、母親は朝食の準備をするため背中を向けたまま会話を続けます。

「学校も残り数日だけど、あまり無理しちゃだめよ」

 台所に立つ母の姿、その背中を見つめる時男は、少女のことを相談しようか悩んでいました。
 ですが、昨晩から同じように、どのような言葉で相談していいかわからないでいました。
 正直に、ある特定の人物がガラスの容姿に見えるなどと口に出せば、母親は心配すると、判断できていました。


 何も語れず、背中越しにたたずむ時男に、母親は振り向きます。
 時男は気まずく、コートのボタンかけの、お礼の言葉だけを伝えます。

「このコート、直してくれたんだね。ありがとう」
< 40 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop