ガラスの告白
 その眼差しは訪れることを予感していたかのような、口元も微笑んだものでした。
 時男は保健教員を横目に、恥ずかしさを抑えながら少女に言葉をかけました。

「職員室か、ここじゃないかっと思って」

 少女はその言葉に背筋を伸ばすと、落ち着かぬ口調でそのままの疑問を問いかけてしまいます。

「私を探して、会いに来てくれたの」

 少女は自分の思ったこと、元になる意味を遠回しにも、オブラートに包むこともなく話してしまったことに、目と口を大きく開いていました。
 時男も少女の言葉から、自ら意図した意味に気付かされます。 

 好意を連想させるお互いの行動や言葉であることがわかると、時男は恥ずかしさで顔を下げ、少女は時男の心情を悟るように、それ以上の会話を探す事も見つけることもできずに、黙ってしまいました。

 保健教員は安堵な表情を浮かべ、卓上にある書類に目線を逸らしました。
 困った時男は無意識のまま、治されたボタン止めの紐に、人差し指を引っ掛ける形で手を添えていました。

 少女は目新しく、色味の違うその部分を気にした様子で口を開きます。

「その着ているコート、二番目だけ色が違うんだね。お洒落にわざと変えたの」

 時男は、少女の目線の先が、どこであるのか気づくと、指で撫でるように変えさわります。目線を胸元に移し、先ほどの恥ずかしさが残りながらも、顔を熱らせ説明をしました。
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