ガラスの告白
「ううん、違うっ。ボタンかけの紐が切れていたから、昨日直してもらって」

 時男は少女に、目線を移し話しました。

「変かな」

 保健教員は少女の発言を待っているかのように顔を向けると、少女も顔を見合わせ、保健教員と同じように、微笑んでいるように思えました。
 少女はもう一度、時男を見て、静かに首を振りました。 

「そんなことないよ。かっこいいと思う」

 時男は素直にその言葉を受け止めます。

「よかった。入学当時に買ってもらったから、どうせなら一緒に卒業を迎えたいから」

 無理に会話を行おうとする時男は、普段では語らない、表現の言葉を遣っていると、自身でも感じていました。
 気にした少女の表情からは、どの様な気持ちなのか感じ取ることができないでいましたが、きっと何処にでもいる心の優しい子だと思っていました。


 時男と少女は、その後何も語れず、お互いが顔を下げてしまいます。
 小さな沈黙の中、保健教員は、時刻を気にし壁掛けの時計を見上げました。
 そして冷静に、二人がこれから行う授業へ向かうよう、進める言葉をかけます。
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