ガラスの告白
「このコートのボタン、止め紐が切れているわね」

 現在着ているコートは、ダッフルコートと呼ばれている上着で、前側にボタンと紐状の輪っかが縫い付けてあるものでした。

 四つ有るうちの上から二番目、そこがぶら下がるように切れていたのでした。

「うん……でもこうやって縫えば大丈夫かな」

 切れた紐を手で押さえ、まだ使える。問題ないと表現しているようです。
 それ以外にも肩から胸にかけて、リュックの重みで生地が擦れ薄くなっています。
 時男が襟巻きを巻く間、母親はそれを不憫に目を細め見ていました。


 時男は母親の表情を気にし、目線を下げたまま答えます。

「これは高校生活を送るため買ってくれたコートだよ。だから最後もこれで迎えるよ。それよりも、そろそろバス停に向かわなくちゃ」


 母親も時刻を気にし、通学リュックを手渡しました。

「気を付けていくのよ」

 送り出す言葉に軽く振り返ると、優しい微笑みを残し、暖かな家庭の玄関の扉を閉めていました。
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