ガラスの告白
 時男は玄関先の庭に出ると、ここ数日間、見ることのなかった水色の輝きに、空を見上げました。

(天気雨だ)

 先程まで家の中にも陽射しが差し込んでいたのは認識していましたが、これほどまで不可思議に映る空模様とは思ってもいなく、驚くように言葉が漏れていました。


 晴天の空の下を、薄く膜のような雨雲がまばらに浮かび、すごい勢いで流れていきます。
 太陽の日差しは霧のように細かい雨を輝かせ、光の粉が舞い降りてくるようでした。

(なんて幻想的なんだろう)

 門扉もなく、低い竹で出来た敷地を囲む塀には、うっすら積もった雪が溶け出しています。
 歩き踏みしめた雪の上も、溶け混じる土の足跡を残すと、へばり付く様に靴底に雪が着いてきました。
 敷地前の小道では、地面からの照り返す光と小雨の輝きで、眩しく目を細めています。


 家やまばらな電信柱は、その光に存在を消されるかのように黒く影って見え、そんな光景の違和感を楽しむように、興味深く見渡していました。
 少し暖かく感じる日差しの中を、顔に当たる冷たい霧雨は心地よい気持ちにさせます。

(傘はいらないか)

 持ち忘れ出たことに、丁度良いと都合を合わせました。
 さほど濡れることもない。そのうち、この霧のような雨もやむだろうっと、楽観的に考えてもいました。
< 7 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop