ガラスの告白
「うん。浩(ヒロシ)君も気をつけてね。今日はありがとう」

 作り笑顔の中に、一瞬、強張る表情が見えました。
 要が異性と居たところを見られたくなく、恥ずかしがっていると感じました。

 時男や渡辺にとっては妹のような存在ですが、彼女も女性に成長し、恋愛の一つや二つ当たり前のこと、しょうがないことだと考えていました。

 ですが先ほどの些細な動揺で気持ちがつわり、時男も観ないであげたかったと、少しだけ心が悲しいものに近づきます。
 視線を逸らしながらも、気になり見つめた要の後ろ姿は、走る出すバス内に立ち揺られながら、バスが男子生徒から遠ざかり視界に入らなくなっても、立ち尽くしていました。

 時男は心配になり「要」っと声をかけると、ようやく足元をよろつかせながら、隣の席に腰を下ろします。
 気まずさを感じると、焦りで言葉を探しきれずに、自身の手元を見いるように顔を下げていました。
 時男は沈黙から伝わる感情に居た堪れなくなると、少し作ろった明るい声で話しかけました。

「今帰りなんだ? 部活などの引き継ぎ」

 要は心を切り替えることができずに、軽く首を振り答えます。
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